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diary
2004年03月09日(火) Smells like...
ふわり。と、花のにおいがした。
視線を落とすと、沈丁花が咲いている。
あぁ、もう春か。
そういえば、以前にもこの香を嗅いだ。
「金木犀だ」
と、あまりに自信たっぷりに言われたので、笑うのも悪いようで、でも間違っているし、どうしてあげよう?
と、困ったのだっけ。
思い出した。
風が、強く吹いた。
肩の下まで伸びた髪がさわさわと乱れて、手でもって押さえる。
ふわり。と、花の香とは違うにおいがした。
家を出る直前につけた、甘い、りんごのにおいのする香水だ。
暫く、この香水をつけていなかった。
部屋には、十本以上の香水瓶があって、気分でつけてみるのだけど、中にはもう飽きてしまったり、気にいらなくなって、つけなくなってしまったものもある。
その中のひとつを今日、気紛れにつけてみたのだった。
何で見たのか忘れたけれど、ひとつ、憧れているものがあった。
付き合った人毎に、香水を変えるというのだ。
香りひとつひとつに、ひとりの人の思い出が詰まっているので、その想いを他の人のそれと混ぜ合わせないように、ひとりにひとつの、香り。
もちろん、そうすると、使い切れないで残ってしまった瓶が出てくる。
そういうのを、たまに眠る前につけてみたりする。
嗅覚が、呼び起こすもの。
それを嗅いでいる間、彼女は何を想うのだろう。
残念ながら、わたしには香水の数ほど恋愛していないし、相手が匂いものが嫌いそう(つまり、実際確認をとるようなこともしない)、という理由で香水をつけなかった恋愛もある。
それに、好きな香りを身に付けたいのだから、別れたからといって、その香りを纏えないというのは、正直出来そうにない。
ふぅ、と息を吐いて、手首を鼻に近付けて、甘いりんごのにおいを嗅いでみる。
でも、だからこそ、憧れる。
また風が吹いて、さっきとは違うところから、同じ沈丁花のにおいが流れてきた。
五感の中で、一番繊細な記憶をとどめるのが、嗅覚だと思った。
ほら、またこの季節…。
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サキ
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