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2004年03月02日(火) パスワード・エラー
正確にいえば、IDのエラーだったりする。
アイデンティティを失っているから、自分のナンバーを忘れている、のかな。
メロンソーダにオレンジジュースを混ぜながら、思った。
もっぱら、自分自身にナンバーをつける、というのは極めて実用的なことと思う。
管理する側がやりやすい、という以上に、自分はこの、6桁の番号なのだということに、半ば安堵したりすら、する。
生身の人間、という尊厳だかなんだか、そんなものは、とうに忘れた。
失くした。
嗚呼、そんなことを思うと、アイデンティティが云々、そんなのもどうと言えなくなるな。
「欠如、欠如、欠如……」
何が欠けている?
執着だとか、気力だとか、なんだとか。
欠けているといったら、すべて欠けている。
お金も、知識も、魅力だとか。
そんなものが、何だかんだ言って、大事だと思う。
けれど、自分にとっては、それほど重要でもないか。
今、すべて失くしているのだから。
何者でも、ないと思う。
誰もが今、IDのもとに管理され、動いている。
ディスプレイの中に並んだ数字、それがただ、あなただ。
その中のひとつが何かの拍子に消えていても、多分、誰からも気付かれない。
それがこの世界から、ひとりが永遠に消える、ということであっても。
ナンバーを忘れたり、失くしたりすることが、すなわち自らの削除に繋がることだとしても。
その重要性に気付かないのだから、それはその軽さを誰もが知っているということだ。
単純明快な、ルール。
部屋に戻ってくると、明かりが点いていて、あなたが迎えてくれた。
この人の前だけで、ナンバーは作動しなくなる。
自分は「わたし」であり、「名前」を持っている。
それは、それまでとは違う、安堵だった。
それもいつか終わりを告げ、やはり自分はただの6桁の並びなのだと理解したとき、人は、骨になるのだろう。
それも遠くはないのだと知るから、ますます、愛しくなる。
そうなのかな。
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サキ
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