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me note diary

2004年01月18日(日) 非誕生日

此処で此の侭、息絶えることが出来たなら……。


ずっとずうっと、同じ場所で、息をしてきた。
生まれてからずっと、同じ箱の中で、生き続けてきた。
歩く道は決まってて、走る早さも決まってて、会う人も決まってて、思うことも決まってて。
思い付きとか、偶然とか、そんなものは存在しない。
たとえそう思えるようなことがあっても、それは、やはり必然で。


此の侭此処で。
足を止める度、足元には深い歪。
半歩だけ踏み出せば、堕ちることが出来る。
一歩でも踏み出せば、また、進んでいくことが出来る。


「パーティをしましょう。」


華やかな笑い声と、ティーカップの軽くぶつかる音。
午後のティーパーティ。
そこに集うのは、みんなめかしこんだ、人間、動物、植物、鳥類。
あぁ、不思議の国に来たんだな。


『歪に、落ちてしまったのかしら?』


「今日はね、パーティよ。」
「なんで?どうして?」
「決まってるじゃない。非誕生日だからよ。」
「そうそう、一年で364日もある、大切な日だからよ。」
「非誕生日のパーティなの?」
「そうそう。だからプレゼントもあるのよ。」
「じゃあ、誕生日はどうするの?」
「もちろん、パーティするのさ。」


「あたし、こんなところでとまってられない。
 じゃあね。さよなら。永遠に。」


主役抜きでも、パーティは続くんだよと、教えてくれたのはおさかなさんだった。
だからパーティは続いて、
そしてあたしは主役だったんだなと、そのとき気づいて。
でも、だれもそんなこと、どーでもよかったのね。


誰もが同じところにいるのが当たり前で、みんなそこにいるの。
だから、誰かひとり欠けてしまっても、誰も気づかない。
たとえそこに、生気のない人形が横たわっていたとしたら、
誰かが邪険にして、それを片付けてはくれるだろうけど、
それがなんなのか、それがどうしてそこにあるのか、
そんなことは誰も、関心がない。


手の中にひとつ。
非誕生日のプレゼントが入ってた。
いつのまに。
それを開けてみた。
差出人は、「ぼく」
受取人は、「きみ」
肝心要のプレゼントは、あしあと、だった。



『これはきみのあしあとです。これはきみの、いっぽの歩幅です。
 もしもいっぽを、進めなくなったときがあったなら、
 これを地面におきなさい。
 そして、それをまたいでみなさい。
 かくじつにいっぽだけ、きみはすすめます。
 非誕生日、おめでとう。』


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管理人:サキ
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