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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2011年11月08日(火) 処方薬への依存について(その3)常用量依存の治療 アルコールとベンゾジアゼピン系は、同じ鎮静系の薬物として作用のメカニズムの多くが共通しています。だからこそアルコール解毒時の離脱症状に効果があります。また、アルコール依存症者はベンゾジアゼピン系への耐性を獲得しやすいことにもあり、常用量依存になりやすいのです。
常用量依存の何が問題なのか、前の雑記をまとめると、
・認知機能の低下
・注意力や集中力の低下
・反射的運動機能の低下
こうしたデメリットがあるにもかかわらず、なぜ服用が続けられるか。もちろん反跳や離脱症状が理由なのですが、アルコール依存症者の場合には別の事情もあります。アルコールの離脱は強い飲酒欲求を呼びます。ベンゾジアゼピン系の退薬も飲酒欲求を呼び起こしてしまいます。下手に中止して「酒を飲まれるよりまだマシ」だからという理由です。
しかし断酒が安定してきたら、睡眠薬・抗不安剤の中止も検討されるべきです。昔のAAは(いまでも?)薬を飲んでいるのはソーバーじゃないとか言って、向精神薬の中止圧力が高かったわけですが、それは常用量依存についてエビデンスがない時代でも、経験的にデメリットが知られていたのでしょう。もちろん、そのおかげで必要な薬をやめてしまい、症状が再燃するトラブルもあったわけですが。
急激に中断しても反跳や離脱症状が起きない人もいます。しかし、多くの人は薬の飲み忘れによる不眠や不安を経験済みなので、反跳や離脱症状に対して恐怖感を持っています。だから、1/4や半量ずつゆっくりと減量していきます。それでも1週間程度は不眠気味になりますが、それは我慢せざるを得ません。そうやって漸減し、やがて完全に中止します。僕の場合には、半年以上かけ、その間に薬を減らすたびに反跳の不眠が起きて辛かったのですが、おかげさまで寝るのに薬は要らなくなりました。
県内の古い医師が、「薬を突然止めると眠れなくなることは患者も分かっているから、中止すると『先生、薬を出してくれるまで帰りません』と言って診察室からテコでも動かない。仕方ないから別の薬、たとえば風邪薬を出しとくんだよ、あれも少し眠気が出るからさ」と経験を語っておられました。
風邪薬を使うのは少々乱暴な気もしますが、非ベンゾジアゼピン系の薬への置き換えも行われています。不眠に対してはアタラックスとか、不安にはセディールとか。いったん別の薬に置き換えてベンゾジアゼピン系の離脱を緩和し、やがてそちらの薬も中止します。
海外ではベンゾジアゼピン系の販売量は減ってきているのだそうです。長期服用ではメリットよりデメリットが大きいことがその理由だと聞いています。日本ではなぜ減らないのでしょうね。
アルコール依存症とは別の病気も抱えていて、長く薬を飲まなければならない人もいます。いつ中止するかは医者と相談して決めてください。「薬が必要な患者は飲みたがらず、薬が要らない患者ほど飲み続けたがる」とは医師の弁です。
昔と違って依存症という概念が広く知られるようになり、依存症以外の病気も同時に抱えている人や、依存症と言えるかどうか微妙な人たちも医療がすくい取るようになってきました。その結果、アディクションの世界の中に「長く薬を飲まなければならない人」の割合が増えてきました。その影響で、睡眠薬や抗不安剤の中止圧力は下がり、「薬を飲んでいるのはソーバーとは言えない」という言葉も下火になっていきました。それはそれで現実に合わせた変化だったのですが、結果として、純粋なアルコホーリクなのに薬を飲み続け、質の良くない断酒をしている人も増えてきてしまった、・・という話をすると、結構頷いてくれる人が多いんです。わかるでしょう?
かといって、昔みたいに圧力を高めりゃ良いってものでもないし。中止すべきかどうか、見極めができる人材を増やしていくしかないのじゃないでしょうか。小難しいことを考えねばならない時代になったものです。
(抗不安剤依存の項おしまい)
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