心の家路 たったひとつの冴えないやりかた

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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2011年07月20日(水) 三種類の酒飲み

ビッグブックのp.31〜33では、酒飲みを3種類に分類しています。

・ほどほどの酒飲み(moderate drinkers)
・大酒飲み(hard drinker)
・本物のアルコホーリク(real alcoholic)

酒を飲む人の9割は「ほどほどの酒飲み」で、酒に関して問題はありません。

「大酒飲み」は、「徐々に身体も心もむしばまれていくような、たちの悪い飲み方をする」とあります。そのせいで寿命が縮んでしまうこともあるが、重大な危機に直面すれば、まだ酒をやめるか控えることもできる人たちです。もちろん、そのために医療を受ける必要がある人もいます。中には精神病院に入院するはめになった人もいるでしょう。

最後の「本物のアルコホーリク」というのが、AAが対象としている人たちです。AAは、本物のアルコホーリクは病気であり、意志の力で酒をやめることはできず、回復するためには霊的な体験をする必要があると言っています。そして、その体験を得るための手段はいろいろあるでしょうが、その一つが12のステップです。

ここで気をつけなければならないのは、「アルコール依存症」の人が全員「本物のアルコホーリク」とは限らないということです。「アルコール依存症」というのは医療が付ける病名です。一方で、AAは「本物のアルコホーリク」という別の概念を使っています。だから、この両者の間にズレが生じることもあります。

医者は医者の基準で「アルコール依存症」という診断を下します。だから、その中には「本物のアルコホーリク」ではない、単なる「大酒飲み」も含まれていることでしょう。そういう人たちもAAにやってきます。AAは「酒をやめたいという願望」を持った人であればウェルカムであり、医者の診断すら必要ではありません。そうなると、AAの中に「大酒飲み」と「本物のアルコホーリク」が混在することになります。

「大酒飲み」の人たちは12ステップをやらなくても酒をやめていけます。彼らは「仲間の支え」などによって安定して酒をやめていくでしょう。意志の力でやめることもできるかもしれません。一方、「本物」の人たちはステップを経験しなければ、待っているのは再飲酒だけです。AAの中には真面目にミーティングに来ているのにしょっちゅう再飲酒を繰り返す人もいれば、大した努力もしていないのに安定して酒をやめ続ける人もいます。この違いにも関係しているかも知れません。

本物と大酒飲みの間には体験にズレがあるため、共有できるものが少なくなります。だから、AAをやっていても喜びが少なく、何年かすればAAから去っていってしまいます。しかもそれで飲まないでいることもできます。だが皆がAAから去るとは限らないようです。

「私はステップをちゃんとやっていなくても、私は○年間飲まずにいるのだから、私は回復しているはずだ」という人がいます。

単なる「大酒飲み」であっても医者に依存症と言われたのなら酒はやめねばならないわけで、酒をやめていることは喜ばしいことですが、残念なことにAAの目的からはずれているのです。

大酒飲みには大酒飲みの酒のやめ方があります。しかし、そのやめ方では本物のアルコホーリクは回復できません。AAに通っていても酒がやめられないという人の場合、AAにいる「大酒飲み」の言葉を真に受けて、そのやり方に染まっているケースがあります。

「大酒飲みの言葉を聞いていたらアル中は死んじまう」

と言った人がいましたが、重大な真実を含んだ言葉だと思います。スポンシーがそうした誤学習をしているばあい、まずそれを脱学習することから始めねばなりません。ビッグブックの読み合わせをしている場合には、このp.31〜33のところで、その話をするようにしています。自分が単なる「大酒飲み」なのか、それとも「本物のアルコホーリク」なのかは自分で決めなければならないことです。

AAには「本物のアルコホーリク」ではない人たちもおり、彼らは12ステップや霊的な経験なしに酒をやめ続けています。彼らも酒をやめたいという願望を持つ限りAAの仲間には違いありません。だが、あなたが「自分は本物のアルコホーリクだ」と思うのであれば、誰の言葉に耳を傾けるべきか、おのずと分かることでしょう。


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by アル中のひいらぎ |MAILHomePage


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