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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2010年12月30日(木) なぜ発達障害に関心を? 今年の初めの雑記を読み返すと、発達障害のことばかり書いていたことがわかります。今年は発達障害に始まり、発達障害に終わった1年だったとも言えます。
僕はアルコホリズムの当事者としてアディクションの問題に関心があるだけです。その僕がなぜ発達障害の問題を追いかけているのか。それは単なる興味ではありません。
AAで酒をやめて5年ぐらいは、僕は県外のAAの実情をほとんど知りませんでした。たまに県外で開催されるAAのイベントに参加するか、出張に行った先のAA会場を訪れるのがせいぜいで、地元のことしか知りませんでした。けれど、しょっちゅう県外まで出かけていく仲間もいて、彼らは「東京近辺のメンバーはすごい(実力があるよ)」と感想を言うのでした。
地元のAAグループはどこも同じような問題を抱えていました。医療機関や保健所などいろいろなところからたくさんの人がAAを紹介されて会場を訪れるのですが、AAにつながる人は少なく、数回来ただけで来なくなってしまう人ばかりでした。また、せっかくAAを続けた人も、2〜3年すればミーティングに来なくなることが珍しくありませんでした(これを「卒業」と呼ぶ)。
結果どこのグループでも、一部の熱心な人たちがAAグループを切り回し、あとはビギナーばかりという状況が続いていました。
ビギナーを定着させ、「卒業」を防ぐために、ミーティングに出続けようという呼びかけが熱心に行われていましたが、何の解決にもなっていませんでした。だがきっとそれは僕の地元のローカルな問題で、東京や神奈川に限らず、大都市近辺には人数の多いグループはいっぱいあるにちがいない。日本のどこかにはこの問題を解決した人がいるはずだ・・・。そのように期待していました。
その後、AAの評議員という役割に選ばれました。これをやっていた2年間は、毎月東京へ行って関東の仲間と話をし、また2月には全国から集まっての会議がありました。それでわかったことは、僕らが抱えていた問題は、全国のAAに共通する問題だということです。
NY GSOのメンバー推計を見ると、アメリカのAAメンバー数は126万人。グループ数は5万7千ですから、1グループあたりの平均メンバー数は22人です。いま日本のAAグループで22人のメンバーがいるグループがどれだけあるでしょう?
AAを「卒業」したとしても、その後ずっと再飲酒することがなければ、AAはその人の役に立ったと言えるのでしょう。だが、そうではないことは数々の経験が証明しています。
「日本のAAは構造的問題を抱えている」
ではその原因はどこにあるのか。12ステップの力が弱まったからです。ステップ5(棚卸し)までしかステップをやらない人たちが増え、やがてまったくステップをやらないAAメンバーも増えてきました。スポンサーもスポンシーも持たないメンバーも増えました。僕も日本のAAのメンバーとして、これと無縁ではありませんでした。スポンシーや、グループのビギナーを手助けする手段を持たず、なにより自分の飲まない生活そのものが危険にさらされていました。
AAが持っているユニークな力を、日本のAAは失ってしまっていました。ではどうやってそれを取り戻せばいいのか。日本のAAを始めた二人のメンバーはすでにこの世にいませんし、この二人の代わりを勤めようという人も現れません。手段はないのか?
その答えが「ビッグブック」でした。これはAAのメッセージを運ぶ器として作られたものですから、うってつけでした。同じ問題意識を持っている人たちが集まって、ビッグブックのムーブメントが起こりました。それについては何度も書いてきているので改めて書きません。
その結果を評価するにはまだ早いと思いますが、多くの人たちと同じように、僕も「手ごたえ」を感じています。このやり方を続けていけば大丈夫だという確信を得ています。
だがビッグブックを使ったステップですべてが解決されたわけではありません。僕自身のスポンサーシップの中にも失敗がありましたし、他の人についても同様です。うまくいかなかったケースはいくらでもあるのです。
失敗には原因があり、そこには何かの問題が存在しているはずです。その原因をつきとめて解決すれば、失敗は減り、ビッグブックのステップの成功例はもっと増えるはずです。なにも考えずにただ失敗を繰り返していては愚かとしか言いようがありません。
そうやって調べていくうちに、発達障害の問題につきあたりました。もちろん、ステップがうまくいかない理由には様々なものがあり、すべて発達障害というわけではありません。けれど、発達障害を学んだ目で見れば、依存症と呼ばれる人のなかに意外なほど発達障害の問題を抱えていそうな人が多いことに気づかされます。
たいていの場合、発達障害は回復の足を引っ張る方向に作用しています。この問題をどうやって解決していったら良いのか。それは(少なくとも僕にとっては)すべてこれからです。でも、数年前からこの問題に取り組んでいる人たちもいて、その人たちの経験は他では得がたいものです。
これが、僕が発達障害に関心を寄せている理由です。
つまり、まずAAの中でステップの力が弱まったという問題があり、それをビッグブックのステップという手段で乗り越えつつあるわけです。そうやって、ひとつの山を乗り越えたところ、次に発達障害という山が見えてきたので、今度はそれを乗り越えなくちゃならなくなったわけです。
(たぶん、発達障害という山を乗り越えれば、次にまた別の山が待っていることでしょう。問題と解決とは常にそういう構造をしているものです)。
適切な支援があれば、酒をやめ、人々のいる社会に復帰できる人はもっと増えるはずです。
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