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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2010年09月09日(木) キンドリング(その3) アルコール依存症になるには、それなりに長い期間飲み続けないといけません。若い人の場合には、この期間は短くなりますし、女性だと「お酒を飲み始めて乱用になるまでたった数ヶ月だった」という話もありますが、いずれにせよある程度の期間は必要です。
たいていの人は医療機関で「アルコール依存症」というお墨付き(診断)をもらっています。診断をもらう前に酒をやめる人も少なくありませんが、それはまた別の話にしましょう。
医療機関にかかるのは、お酒で何らかのトラブルが起きたのが原因です。なんかヘンだと誰かが思わなければ医者に行く(連れて行かれる)わけはありません。だから、お墨付きをもらった後で、無事にトラブルなく酒を飲める人はまずいません。
・・・とは言うものの、診断をもらった後でトラブルが急増した感じがする、って話があります。お前は依存症だから酒を飲んではいけない、と言われたせいで、急に病気の進行が早まった気がする、と感想を漏らす人がいます。
これについては、いくつかの説明が可能です。診断をもらう前は、酒でトラブルを起こしていることに無自覚だったものが、診断をもらうと人にかけている迷惑を自覚せざるを得なくなって、トラブルが増えたように感じている、という説。
別の説は、「お前は酒を飲むな!」と言われるために、隠れて酒を飲んだり、飲んだことを隠そうと努め、それが本人には心理的な苦しさ、周囲には不審な行動と見られて、トラブルを増やしている、という説。
しかし、キンドリング現象を根拠にすると「病気の進行の速度が速まる」と解釈することもできます。キンドリングでは、継続して刺激が与えられるより、間欠的に刺激を与えた方が、脳の変化が早く起きます。これは電気刺激だけでなく、化学物質による刺激でも同じです。・・・ということは、酒を飲み続けている(継続的な刺激)よりも、断酒と再飲酒の繰り返し(間欠的な刺激)のほうが脳の変化の速度が速い=依存症の進行が速まる、と考えても矛盾はしません。
AAにやってきて何ヶ月か酒をやめ、再飲酒すると、前よりひどいトラブルを起こす人がいます。それにはいろんな説明が可能です(溜まりに溜まった飲酒欲求が、堰を切ってあふれ出したのかもしれません)。けれど、
酒をやめている期間も依存症は進行している
という経験的事実は、キンドリング現象で説明がつきます。実際病気が進んでいるのかもしません。
中途半端な断酒はかえって病気を進行させる。何年間かに何度か再飲酒がある程度という人と、同じ年数(やめずに)飲み続けてきた人を比べると、前者のほうが重症化したヒドいアル中になっている可能性があるわけです。断酒は病気の進行を止められる、というのは必ずしも真とは限りません。やめるのなら、完全にやめるしかないわけです。
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