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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2010年09月07日(火) キンドリング(その2) 9月になってから夏ばてになっているひいらぎです。
さて、本題。てんかんは、脳内のネットワークが部分的に異常に興奮する(異常発火・てんかん放電)ことで起こります。ではこの興奮を人為的に作り出したらどうでしょうか。
ネコやラットの脳に電極を刺して電流を流します。この電流はてんかん発作を起こすほど強力ではなく、ごく微弱な電流です。当然ラットの行動には何の変化も起きません。しかし、この刺激を一日一回続けていくと、3週間ほどするとてんかん発作を起こすようになります。さらに続けていくと、発作が次第に激しさを増していきます。(時間依存性がある感受性の亢進)。これをキンドリングと呼びます。
さらに大事なことは、こうなったラットに電気刺激を加えずにおき、たとえば1ヶ月後に再び電気刺激を与えると、1回目から激しいてんかんを起こすのです。つまり、時間が経過しても、亢進した感受性(てんかんを起こす体質)は消えません。これは、てんかんが一生治らないことと一致します。
キンドリング現象は電気刺激だけではなく、化学物質の反復投与によっても起こります。
アル中さんたちも、アルコールという化学物質を自ら反復投与します。毎日同じ量を飲んでいたとしても、最初は何も起きません。けれどある時から離脱症状が起こるようになり、それが激しさを増していきます。やがては連続飲酒発作も起こるようになります。そして、しばらく断酒を続けていても、再度酒を飲むとあっという間に元通りの飲んだくれに戻ってしまいます。一度そうなったら元には戻りません。
電気刺激の反復によるキンドリング現象がてんかんを説明できるのであれば、化学物質の反復投与によるキンドリング現象がアルコール依存症の症状を説明できる、そう考える人がいます。
電流をひたすら流しっぱなしにするよりも、この実験のように間欠的(一日一回とか)に刺激を与えるほうがてんかんが早く起こるようになります。
そのことが化学物質の反復投与でも起こるとするならば、「酒を飲んだりやめたりするほうが、ひたすら飲んだくれっぱなしより依存症が早く進行する」という経験的事実を説明できます。
つまり、半端な断酒はかえって依存症を進行させる・・わけだ。それについてはまた次回。
(続きます)
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