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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2010年06月10日(木) 離婚 掲示板で離婚という単語が出ていました。
僕も離婚経験者なので、それについて少しだけ書いておこうと思います。
離婚は結婚よりずっとエネルギーが必要だと言われますが、それはその通りです。
結婚するときは、二人とも気持ちのベクトルが「結婚したい」という同じ方向を向いています。けれど、離婚するときは、離婚を請求する方(離婚したいと言い出す方)と請求される方で、気持ちのズレがあります。お互い次の相手が決まっていて早く別れたいという場合ならいざ知らず、片方はあまり離婚したくないと思っているのが普通じゃないでしょうか。結婚するのも大変ですが、それは共同作業だからまだいいのであって、離婚は足の引っ張り合いになりがちなのでエネルギーを消耗するのです。
だから、離婚するには、様々なサポートが必要になります。婦人相談所、法律家、カウンセラー、グチの聞き役(モラル・サポートってやつ)などなど。そうした支えなく離婚を遂行しようとすると、途中でエネルギーがつきて離婚話がうやむやになってしまったりします。それほどまでに「現状維持」というのは圧倒的なパワーがあり、物事を変えるのは大きなエネルギーが必要になります。
(アル中さんたちも、「現状維持」の圧倒的な力によって飲み続けているんです)。
僕の以前いたホームグループでは、オープンミーティングは(アル中でなくても)誰でも話し(分かち合い)ができました。それに毎回来ていた女性がいました。彼女は旦那さんがアル中で、入院も役に立たずに飲み続けているという状況でした。彼女は半年ほど通い続け、最後に「ダンナの回復は諦めました。離婚することにしたのでもう来ません」という言い残してそれっきり来なくなりました。(当時アラノンはこの地にありませんでした)。
この話をすると、結局AAは彼女の役に立たなかったと判断する人もいます。けれど、僕はそう思いません。1、2回来ただけで来なくなってしまう人たち、再飲酒、それを何度か繰り返して、何年か後にようやく訪れる回復。そうした状況を半年見続けて、彼女はダンナの回復を待つのを諦めることができ、離婚するだけのエネルギーを貯められたのでしょう。
だから、離婚するのだから自助グループは必要ない、という考え方は誤っていると思います。それに、僕は離婚後もアラノンやギャマノンに留まり続けている人たちも知っています。それは離婚がすべての問題を解決するわけではないことを物語っています。子供がいなければ離婚も良いかも知れませんが、別れても子供にとっては親は親なので、離婚すればいいというものでもありません。
「人間最後はどうせ死ぬんだ」と言いながら飲み続けているダンナさんと、「最後は離婚すればいいのよ」と言いながら行動しない奥さん。実は夫婦のベクトルは現状維持で一致しています。だからなかなか離婚しないのです。
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