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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2010年06月08日(火) 自助グループという道具 相変わらずスポンシーから毎晩電話をもらっています。
昨夜はいつもの会場に行ったのに、ミーティングをやっていなかったそうです。きっと何か間違いがあったのでしょう。せっかく行ったのにやってなかったと恨み言が出たり、やっていなかったのをこれ幸い、ミーティングに出なくて済んだとばかりに家に帰ってしまったのなら、スポンサーとしては説教をせねばならないところです。
しかし彼は別のグループの会場に向かおうとしました。ところが近所の会場に行く予定だったので小銭しか持っていません。これではそちらの会場に行く途中の有料道路が抜けられないので、金を取りにいったん家に戻っていたら30分遅刻しちゃいましたが、暖かく迎えてもらえました、という話でした。
そうやって1年目に毎日努力してミーティングに出ることは、一生続くソブラエティの良い土台になってくれることでしょう。立派な建物を建てようと思ったら、基礎をしっかりと工事しなくてはなりません。・・という話をするということは、今日の行動は良かったと褒めることでもあります。
回復の方向へ向かう行動は褒め、ダメな方向への行動は叱る。しかも「後で」ではなく、すぐに。これは犬猫のしつけと同じです。会社の新人教育とも同じかも。
彼は家族から小遣いをもらう身なのですが、以前ミーティングへの交通費をちょろまかして酒を飲んだこともあるので、家族の信用がまるでありません。金を渡せば飲んでしまうし、どうしたらいいんでしょう、とご家族から相談を受けたので、金銭出納帳をつけてもらうことにしました。1円の単位まで出納を記録して、毎日帰ったらそれを現金の残高と一緒に家族に確認してもらう(もちろんレシートを添付して提出)。そこまでやっているのに、今度は「自動販売機で缶コーヒーを飲む回数が多すぎないか?」と言われたそうです。レシートのでない自動販売機でコーヒーを買ったことにして、また酒を買う金をちょろまかしているのじゃないか、と疑われたわけです。
そこまで家族を疑り深くさせたのは、本人の過去の行動です。こんなときの慰めの言葉は、「証拠の空き缶を持って帰って提出しろと言われなくて良かったね」です。(まあ、実際それをやっても、今度はどこで拾ってきた空き缶だと疑われるだけでしょうけど)。
それだけ疑われていても本人が腐ってしまわないのは、真面目にミーティングに通う姿勢が見えるおかげで、少しでも信用が回復する方向へ進んでいるからです。信用回復も自分の努力次第だと実感できれば、努力する方向へ進めるわけです。
自助グループは道具なのだといいます。それを言えば、断酒すら道具です。道具というのは何かを実現する手段ですから、断酒が目的になるのは本末転倒だと考える人がいてもおかしくありません。
断酒というのは、その上に何かを成し遂げるための基礎です。基礎が軟弱だと、立派な建物も倒壊します。良い人生を送りたければ、質の良い断酒という基礎を維持していくことが大事です。つまり、断酒は手段であると同時に目的でもあるのです。自助グループも同様です。
もう一つ大事なことは、道具をきちんと使いこなせているか、ということです。自助グループに負の感情を持つ人は、自助グループという道具の使い方が下手なのです。逆上がりができない小学生が、鉄棒の授業を嫌いになるのは自然なことです。
逆上がりはできるまで練習しなければできるようにはなりません。だからミーティングにひたすら通えと言うわけです。
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