心の家路 たったひとつの冴えないやりかた

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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2009年11月17日(火) ダウンレギュレーション

人間の体内では神経細胞から隣の神経細胞へと刺激が伝達されていきます。
隣の細胞へと刺激を伝達してくれる機構が「シナプス」です。伝達する側の細胞のシナプスから「神経伝達物質(ニューロトランスミッター)」が放出され、受ける側のシナプスの「受容体(レセプター)」に吸収されることで、細胞をまたがって情報が伝達されていきます。

ホルモンの場合には、伝達物質を放出する細胞とそれを受け取る細胞が離れているのに対して、神経伝達物質の場合は隣り合った細胞(つまり局所的)に働きます。

脳は神経物質の塊で、そこで活躍する神経伝達物質がモノアミン類。合成経路で書くと
ドパミン→ノルアドレナリン→アドレナリン
セロトニン→メラトニン
ヒスタミン
(他にもある)

覚醒剤を使うと脳内でドパミンがさかんに放出されます。(なので覚醒剤中毒の症状は、同じようにドパミンの調整障害である統合失調症の陽性症状に似て幻覚などを伴う)。このドパミンシャワーが覚醒感の元であろうと推測されるわけです。

覚醒剤に限らず、人が気持ちいいと感じる物質(アルコールや麻薬や向精神薬)、あるいは行動(買い物やギャンブル、山登りでも!?)で、ドパミンが放出されます。この頻度が高いと、情報を受ける側の細胞(シナプス後細胞)が受容体の数を減らして、刺激を受けにくくなります。するとドパミン神経系全体が興奮しなくなり、以前ほどの快感を感じなくなります。そこで人はより強い刺激を求めて、より多くの酒を飲んだり、より多くの買い物をしたり、より高い山に登ったりします(そして高尾山じゃヤダと言い出します)。

これが依存症の「耐性」の形成です。病気が悪くなる過程。その実体は、シナプスの受容体の減少(これをダウン・レギュレーションと言う)です。

ダウン・レギュレーションが起きていると、依存物質が体内にある状態でバランスが取れているので、酒が体から抜けると不調になります。これが離脱症状です。週末に山歩きに行けないと不調になるのもそうでしょうね、きっと。

話は変わって、うつ病には抗うつ薬という薬が出されますが、抗うつ薬が効果が現れるまで2〜3週間かかると説明されます。なぜすぐに効果が出ず、2〜3週間かかるのか? その説明にダウン・レギュレーションが使われます。

うつ病の人の脳ではセロトニンの量が減少しています。抗うつ剤はセロトニンがたくさん出るようにする薬・・・ではなく、セロトニンの再吸収を阻害する薬なのだそうです。
シナプス前細胞から放出されたものの、受容体に結合できなかった(余り物の)神経伝達物質は、再びシナプス前細胞に吸収されて再利用されます。(つまり、シナプス間隙の伝達物質濃度は自動的に下がるようになっている)。
セロトニンの再吸収を阻害することで、シナプス間隙にはセロトニンがたくさん存在する状態が続きます。それが続くと、セロトニン受容体にダウン・レギュレーションが起こり、受容体の数が減ります。このダウン・レギュレーションが起こるまでに2〜3週間かかるのではないか、と考えられています。

クライマーズ・アノニマスの創始者になったりしないよう、山登りもほどほどにしてくださいね。二郎さん。


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by アル中のひいらぎ |MAILHomePage


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