ホーム > 日々雑記 「たったひとつの冴えないやりかた」
たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2008年04月01日(火) 幻の姉 僕と兄とは6才離れています。実は2才年上の姉が存在するはずでした。が、生まれてすぐに亡くなってしまいました。その後に僕が生まれることになったのですが、姉が順調に成長していれば、僕は存在しないはずの子供で「幻の姉の代わり」でした。
農家ですから、男手が多いのは喜ばれますが、女の子だって必要です。かあちゃん、ばあちゃんが野良仕事から疲れて帰ってきた後で、家事の手伝いをしてくれる子がいれば楽です。
そんなこともあって、小学校時代の僕は「お前は女の子の代わりだから」と言われながら、食事の準備やかたづけ、掃除や、風呂の火の番などをさせられていました。今の時代であれば、男の子がこれぐらいの家の手伝いをしてもおかしくないかもしれません。けれど、当時の農村ではそれは明確に女性の役割でした。比べられる対象も、従兄弟ではなく、従姉妹たちでした。
僕は「女の子の代わり」であることに大きな疑問も持たず、「優しい子になれかし」という周囲の期待に応えるのが当たり前だと思っていました。まあ、別の女装させられたわけでもないし、不都合はなかったのです。
ただ、心の中では「生きているのは幻の姉ではなく、次男の僕なんだ」という強い思いがあり、それが時にはわがままな行動として噴出しました。「6才も離れていれば、兄弟ではなく一人っ子が二人のようなものだ」と母がよく言っていました。
中学生になって人間関係が変わると、僕はいじめられるようになりました。それは現代の小中学校にあるイジメのような残酷なものではなかったにせよ、僕は毎日くらい顔をして過ごすようになりました。それを見た両親は話し合った結果、「これからお前は男らしく強くなりなさい」と養育方針を変えました。
しかし、いきなり男らしくと言われてできるものではありません。体力や気力が人より優れないと知るや、お前は頭が良さそうだから一生懸命勉強しなさいということになりました。それは親の愛には違いないのでしょうが、問題のすり替えにしか過ぎず、問題は僕の中に温存されました。
アルコール依存症のパーソナリティ特性の研究では、自己愛性パーソナリティ障害が必ず挙がります。また性同一性について問題の指摘する報告もあります。僕はどっちもど真ん中なわけです。
男らしく強くと言われてもしんどいし、じゃあ女として暮らせてと言われても困るし。わがままを抱えながら優しいフリをする男をやるのが精一杯という感じです。
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