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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2008年01月18日(金) 遺伝と環境 病気の原因には、遺伝と環境が挙げられます。
もともと高血圧になりやすい体質を親から受け継いだ上に、塩分の多い食事やストレスの多い職業を選ぶなどという条件が揃うと高血圧になります。同じように味の濃い食事を食べても、高血圧にならない人はなりません。なりやすい体質を持って生まれた人でも、食事などの環境に気をつければ、高血圧になりません。
アルコール依存症の人の子供が、親と同じように依存症になりやすいことは知られています。ただこれが、遺伝によるものか、環境によるものか、という話がありました。
機能不全の家庭で育った子供が、大人になっても満たされない心を抱え、その満たされない心をアルコールで満たす習慣を深めた上でアルコール依存症になってしまう、というひとつのモデルがあります。親がアルコールに溺れていては、家庭がうまく機能しないのも当然です。たとえ親の飲んだくれ期間が比較的短かったとしても、子供の心に不全感を植え付けるには十分です。なので、依存症が親から子に受け継がれるように見えるのは生育環境によるもので、遺伝は関係ないと考えることもできます。
何年か前、アメリカと北欧で、これを確かめる調査研究が行われました。遺伝的に同じ一卵性双生児で、なおかつ養子になった(ならなかった)人を調査したのです。結果は、遺伝上の親がアルコール依存症である子供は、そうでない人に比べて10倍以上依存症になりやすかったのです。これを聞いた頃にネットで探したらアブストラクトが見つかったので、いまでも見つかるかも知れません。
そういった研究が重ねられるにつれ、依存症の人の子供は、大人になっても酒を飲まないのが最善であるという主張がされるようになりました。なにしろ、酒さえ飲まなければアルコール依存症は予防できるのですから、いわゆる生活習慣病に比べればはるかに防ぎやすいのです。(もちろん、ギャンブルとか買い物とか、セックスとか薬などの依存症にならないとも限りませんが)。
もちろん、他の病気と同じように、遺伝するのは病気そのものではなく「なりやすい体質」ですから、アル中の子供が飲んだからと言って全員アル中になるわけじゃありません。親も親族も誰もアル中でないのに、なぜか当人だけというケースもあります。だから、子供の自由だと言ってしまえばそれまでです。
でも、酒など飲まなくても、世の中を生きていくのに不自由しないのは多くの「飲めない」人が証明しています。お父さんはお酒でこんなに苦労した。その体質をお前も受け継いでいるのだから、飲まないのが一番いい、と言ってあげるのが親の責任であるように思います。
アメリカには「じいちゃんも、とうちゃんも、AAメンバー」という3代続けてのAAメンバーもいるそうです。そこまで極端でなくても、「俺は親父を憎み、親父のようにならないと言いながら、大人になったら親父とまったく同じことをしていた」という、笑っていいのかどうかわからない話も結構あります。そんなリスクを負ってまで飲むべきものだとは思えません。
ただ、もう酒の味を覚えちゃった成人した子に酒をやめさせるのは、まだアル中になっていなくても難しい、とはよく言われることでもあります。
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