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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2007年10月26日(金) 信用(その2) (その1から続く)
彼は最初のころは毎日ミーティングに出ている人でした(当時の長野県でですよ)。ソーバー3年近くたった当時も、週に4〜5回出ていたでしょう。スポンサーもいたし、ステップ4・5の棚卸しもしていました。毎月県外のAAイベントに出かけていて、知り合いも多いようでした。とんでもない遠くのAAの話を聞かせてくれたりしました。ともかくAAの活動に熱心で、来年からは東京での地域委員会にも行くんだと言っていました。
僕にとって彼は、回復の見本でした。ここまでやれば誰でも回復できるという、AAの回復の体現者だと思っていました。逆に言えば、自分はそこまで活発に活動できないのがコンプレックスでした。いや、コンプレックスではあるものの、いざ自分も追いつめられる時があったなら、彼のようにAAを熱心にやれば、自分がどんなにひどい状態でも助かるに違いない・・と信じる対象でした。
その彼がスリップ(再飲酒)してしまったのです。一体僕は何を信じればいいのか? どんなメンバーを信頼して、アテにしていけばいいのか? ちょうどそのころ、ミーティング会場にメンバーが増え始め、また県内でサービス委員会を作るという話が出てきて、それまで飲まないだけで精一杯だった自分が、AAで他のメンバーとより深く関わる必要が出てきました。その時誰を信用していけばいいのか?
冒頭のシーンは、そこから発せられた疑問でした。
「信用できるメンバー、できないメンバーを、どう見わけたらいいのか」
という質問に対し、その経験の深い仲間は、こう答えました。
「自分の力で酒をやめている人は信用できない」
なるほど、僕は饒舌になって自分の考えを言いました。「つまり、ミーティングにたくさん出て、仲間と一緒にいて、それで力をもらって・・・」
しかし、その人の答えは意外でした。
「お酒は神様がとめてくれるんです。神様のないメンバーは信用できない」
普段は、神だとかハイヤー・パワーだとか言わない人ですし、人一倍仲間との交流に熱心な人ですから、その人の口から「神」なんて言葉が飛び出してきて、びっくりしました。同時に、神様のない自分は、まだこの人に信用されていないんだなと、少し動揺しました。
とはいえ、僕がハイヤー・パワーの存在を願うのは、もっと後のことです。
(この項終わり)
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