心の家路 たったひとつの冴えないやりかた

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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2007年02月24日(土) 「強制的に」と「好きなだけ」

ちくま新書で廣中直行という人の本を読んでいます。
その本の話は、別の機会にするとして。

ある薬が人体にどんな影響を及ぼすか、という実験をする時に、薬を人間に飲ませた後で、脳を切り刻んで確かめるというやり方はできません。仕方ないので、動物を使って実験します。
ところが、動物は薬を飲みたがりませんから、実験のためには、餌に薬を混ぜるとか、注射をするとかして投薬をします。この投薬は「強制的に外部から管理」されています。動物実験は、ずっとそのやり方でした。

アルコール・モルヒネ・アンフェタミン(覚醒剤)・ニコチン・カフェイン。こうした薬物依存の研究をするにも、動物実験をします。人間のアル中患者と同じにするには、動物が自分で薬物を摂るようにしないといけません。でも動物は酒を飲みたがりません。そこで静脈や胃袋にチューブをつなぎ、ボタンを押すと少量のアルコールなどが注がれるように仕組みます。そのボタンは、動物が好きなだけ押せるようにしておきます。
すると、「自分で好きなだけ」薬物を摂取して、依存症になります。

最近になって、前者のように強制的に薬物を与えた場合と、自分から求めて摂取した場合と、脳の中で起きる変化が違うとされるようになりました。

薬物を管理しながら与えると、依存症になりにくい、というのは、昔から経験的に知られたことです。毎日一合の晩酌を続ける人は、酒狂いにはなりにくいわけです。
自分で量を増やしたり減らしたりするのが、依存症への近道であるようです。

精神安定剤には、ある程度の依存性があります。朝昼晩毎食後に安定剤を飲む必要が
ある人もいますが、きちんと服用してれば処方薬依存にはなりにくいものです。もちろん、量を減らしたり、やめたりする時には、リバウンド(離脱)があるのは仕方ないことです。
危ないのは、効かないからと自分で量を増やし、調子が良いからと自分で量を減らすことです。上の動物実験の例で言えば、前者(管理下)から後者(欲しいだけ)に、いつのまにか変わっているわけです。

睡眠薬を切りたい人で、「昨日は眠かったので飲まなかった」と言う人がいます。そういうやり方が依存症者には危険だということは、なかなか理解してもらえません。「自分で量をコントロールできるから大丈夫です」と言われてしまいがちです。
自分でコントロールすること自体が危険だし、コントロールできていると思っていても、いつのまにか、そうでなくなっているものです。

お酒の時だって、自分は(飲む量が、時間が、場所が)コントロールできていると、自分に言い聞かせ続けた何年間があったはずなんですが。


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by アル中のひいらぎ |MAILHomePage


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