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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2006年09月30日(土) スリップ ある種の人々は、AA(や断酒会)とまったく無関係でも、無事に飲まないで生きていけます。5年とか10年とかのある程度長いスパンでみれば、そういう人はごく少数になってしまうでしょうが、それでも確かに存在してはいるのです。
何年間か通った後、AAを卒業してしまう人は多くいます。これもある程度長いスパンで見れば、彼らの多くは病気がぶり返してしまうものの、ある程度の数は無事に生き延びます。そのことは、僕がもらう年賀状の内容からもうかがえます。
自分がそういう「AAのサポートなしで無事にやっていける人間」であるかどうか。
それを事前に知る方法はありません。だから、試してみるしかないわけですが、相当分の悪い賭でもあります。とてもそっちに賭けてみようって気にはなれません。
1年後に飲んでも、10年後に飲んでも、結果は変わりません。長く飲まなければ、再飲酒しても軽くすむってことはありません。
自分の飲酒がコントロールできてないのを認めるのでさえ、多くの依存症者が嫌がります。ましてや、断酒という贈り物に感謝している自分が、いとも簡単にそれを投げ捨ててしまうとは、認めたがらなくて当たり前です。
短期間に再飲酒を繰り返し、なかなかお酒が止まらない人は、実は入院もしていないし、自助グループにも十分に通っていない事例が多いです。本院の言い訳はいつも同じで「時間がない」というわけです。
そうするとハイヤー・パワーは、その人から仕事だとか家族だとかを取り上げてしまいます。今度は「時間がない」という言い訳ができなくなって、やっと回復に向かうというわけです。
いったん安定した断酒にたどり着いた後で、自らケアを中止してしまう事例でも、プロセスは同じだと思います。時間がないと言いながら、自助グループから遠ざかり、スリップする。再び自助グループに戻ってこれれば幸いです。でも、条件が変わっていなければ、また同じことを繰り返すだけです。
仕事や家族や社会的立場を取り上げられるまで、変わらない人もいます。
ハイヤー・パワーに取り上げられる前に、自分で自分の生活を見直すことが必要なんだと思います。仕事や家族が問題なのではなく、自分が変えたくない何かが邪魔していることが多いものです。
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