心の家路 たったひとつの冴えないやりかた

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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2005年10月08日(土) 魂の持ってきどころ

何年か前にAAにつながったあと、ふとしたことでAAを離れてしまい、ガンで余命何ヶ月と宣告されてAAに戻ってきたメンバーがいました。
余命何ヶ月という状況にもかかわらず、彼は働いていました。「無理しなくても」と言うと、「働かないと生活していけない」という答えが返ってくるのでした。抗ガン剤を打つために入院し、しばらくすると退院してまた働くの繰り返しでした。平日は働いてくるともう外出する体力も気力もなく、週末に奥さんの運転する車に乗せられて、土曜のAAミーティング会場に現れていました。お子さんが大学を卒業するまであと何年、俺は死ねないんだ、といって医者の宣告した時期を超えて彼は生きながらえていきました。

僕は自分のことが忙しくなり、土曜日のミーティングに出かけることも滅多になくなりました。
先日、ふと思い出して、その人のメールアドレスに「おそるおそる」というタイトルでメールを出しました。550エラー(メールアドレスが取り消されている場合)でメールが返ってくることが恐ろしかったのです。

返信はエラーメールではなかったものの、奥さんからで、ご主人が昨年の3月に亡くなったことや、先日納骨を済ませたこと、そして二人でAAに通った頃の思い出が書かれてありました。僕は「二度と会えない人」がまた一人増えたことを知るのでした。

ガンを宣告されてAAに戻ってきたのは、僕の知る限り彼が二人目です。
なぜ戻ってきたのか訪ねてみたのですが、二人とも感情のスリップを口にしました。

AAメンバーは、たとえAAから離れて暮らしていても、死を目の前にしてAAにもどってくるようにできているのじゃないか。そんなふうに想像してみたりします。


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by アル中のひいらぎ |MAILHomePage


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