心の家路 たったひとつの冴えないやりかた

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飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2005年08月15日(月) 台湾から戻って戦争について考えた

正しい戦争などはないということは僕にもわかります。

日清戦争で得た「台湾」。そして中国の従属国であった朝鮮の独立を中国に認めさせ、あげくに併合して得た「朝鮮」。日露戦争で得た「南樺太」。国際連盟の委任統治領だった南洋諸島。これらは日本の植民地でありました。

だが、少し歴史をさかのぼってみれば、琉球(沖縄)は清朝からぶんどったものだし、蝦夷(北海道)には先住民がいたところに植民した場所です。細かい例を挙げれば小笠原なんかもそうかもしれません。これらについては不問なのであります。

アメリカも独立当時は東海岸の13州しかなかったわけで、西へ広がる過程では(金銭によってナポレオンから買ったものもありましたが)メキシコやスペインとの戦争の結果、領土拡張を進めてきて、西海岸にたどりついてもとどまらず、独立国家だったハワイを併合、フィリピンをスペインからぶんどっています。

植民地は本国を潤すためのシステムですから、支配された方は搾取され続けてたまったものではなかったでしょう。だがまあ、そういう時代であったのだとしか言いようがありません。途中で独立されたり、他国にぶんどられたりせずに、本土化が進んでしまえば、植民地支配も正当化されてしまうという例は枚挙にいとまがありません。ヨーロッパの国であるロシアが、太平洋にたどり着くまで領土拡張を続けたこと。すっかり中国領土となったチベット。アメリカのプエルトリコ。などなど。

8月15日に終わったという戦争は、ふたつの起点を持っていると僕は思います。ひとつは1931年9月18日の満州事変。これを起点に日本は満州という傀儡国家の建設を行うようになります。それから、1937年7月7日の盧溝橋事件。これをきっかけに朝鮮にいた日本軍が国境を越えていきます。
いずれの事件も日本側の軍による自作自演であったとする意見が強いです。ポツダム宣言で連合軍が日本を降伏させるにあたって、日本政府に降伏を迫ったのではなく、日本軍に降伏を迫りました。これは、「一連の戦争は軍の独走によるもので、日本国民や主権者(天皇)の意図したところではなかった」という着地点を目指したものだったのでしょう。事実戦後のGHQの「軍の独走が悪かった」という教育とも相まって、国民は戦争なんかしたがっていなかったのに、軍には逆らえなかったという雰囲気を作りだしました。

しかしこれは、単に(後に西側と呼ばれる諸国が)極東における橋頭堡として自陣営に安定した国が欲しかったという理由にすぎないのでしょう。朝鮮はカイロ宣言の言葉にあるようにまさに enslavement であって国としての体裁をなしておらず、台湾は地政学的にあまりに中国本土に近すぎました。ここで、日本の主権者の戦争責任を問い、戦後体制を不安定にしてしまうのは、西側の(特にアメリカの)望みではなかったのでしょう。
だが「先の戦争は軍部の独走」という幻想は、その後も日本国民に染みついて離れていないような気がしてなりません。

しかし軍部の後押しをしたのは経済問題であったはずです。
黄禍論・世界恐慌・関東大震災・ブロック経済。当時の日本経済の苦境を語るキーワードです。生活の苦しさが強権を後押ししたという点では、ドイツのナチズムと似ているかもしれません。でも、ドイツでは「なぜナチズムを止められなかったか」という反省が戦後一貫して行われています。それに対して、日本では「なぜ軍部の独走を止められなかったか」という反省が行われることもなく、ただ漫然と平和憲法とアメリカの軍事力の傘の下で、経済発展を享受してきました。

中国が石油の輸入国になるという予想はきちんと当たりました。そりゃ自動車は石炭では走らないから当たり前でしょう。あの国の指導者は、膨大な数の国民を食わせ、豊かにする仕事にひたすら追われています。石油の消費量は今後も伸びていくでしょう。
尖閣列島のある大陸棚には石油資源があると言われています。また中国が「日本の領土ではない」と主張して都知事を怒らせている沖ノ鳥島近海にも石油資源がある可能性があります。

領土なんて要らないと言っている人も、いざ資源競争に負けて不景気になり、職を失って食う飯にも困れば、「集団的自衛権の行使」などと叫び出すのではないかと思うのであります。

フォークランド紛争やイラク戦争のように「国のメンツ」などというくだらないものが戦争の種になることもありますが、ほとんどの戦争は経済的な背景を持っているものでありましょう。

結局何が言いたいのかまとまらないままに、二日間日本の近代戦争史を読んですごしてしまいました。


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by アル中のひいらぎ |MAILHomePage


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