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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2004年04月08日(木) 父のことばかり思い出す一日 ボスとふたりっきりで、とても気詰まりのする一日でした。
僕の共感する言葉の中に、「尊敬できないからといって、礼を失してはならない」というのがあります(衣食足りて礼節を知るといのも真実でしょうけど)。
普段はPCのファンの音でうるさいマシンルームも、自分ひとりでいると静かなものです。内線がかかってくる前に、相手が受話器を上げた音が聞こえてくるぐらいです(1階と2階で離れているのに)。
一日に何度も打ち合わせをするなかで、突然彼が、僕の父と会ったときの話を始めました。それは父の死の2週間前のことで、当時僕は飲むことも、飲まないでいることも出来ない状況でした。父と何を話したのか、なぜその話をここで持ち出したのか、ボスは話さなかったし、僕もボスに尋ねませんでした。
もともと彼の最近の行動は、理解不可能どころか了解不可能なものが多いのです。
もしかすると、僕はボスの意図を確かめるのが怖かったのかもしれません。「あの時苦境から救ってやったのだから、今俺の苦境に力を貸してくれ」と言い出されたらどうしよう。恩を返せと言われたら・・・。確かにあの時に仕事を失っていたら、僕はもっと困っていたでしょう。
だが正直な話、僕はその後もこの会社で働きつづけてきたことそのものが、あの時の埋め合わせだと思っているのです。それ以上の責任は引き受けられません。僕はいつも自分の能力を過信し、能力以上の責任を引き受けて、結局は自分も他人も傷つけてきました。「出来ない約束はするな」というのも、AAの仲間の教えのひとつです。
ボスが苦境に陥っているのはよく分かっています。でも、僕が替わりにその責任を引き受けて解決することはできません。彼の人生を僕が替わりに生きることはできないのです。僕の人生を誰か他の人に生きてもらうわけにはいかないように。
ホームグループのミーティングの後、実家へ。
母が言うに、
「お前は誰かに似て、嫌いとなれば顔を見るのも嫌だというタチだからねぇ」
この場合の「誰か」が誰をほのめかしているのか、確かめるまでもありません。それは父のことです。
珍しく父のことばかり思い出す一日でした。
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