another happy day - 2004年06月08日(火) 行き慣れたロードアイランドのはずなのに、なぜか胸がドキドキざわざわしてどうしたんだろうと思ってたら、デイビッドんちの辺りでいつものように駐車スポット探して運転してる途中で事故。自転車がぶつかって来た。わたしがぶつけたんじゃない。自転車がぶつかって来た。ポリスカーと救急車が来てあっという間に人だかりが出来て、わたしはパニックになる。すぐにデイビッドに電話したけど、ショーの仕事がまだ終わらないらしくて携帯は繋がらない。ポリスオフィサーは、わたしに過失はないことをふたりのウィットネスの証言からも認めてくれて、「バイカーはケガをしてませんよ。でもお金を請求してくるに違いないから月曜日には保険会社に届けなさい」」って言ってくれて、わたしにチケットは切られなかった。でも自転車に乗ってた男の人は救急車で連れられちゃった。 デイビッドは、チケットを切られなかったんだから大丈夫だよ、って、マナーの悪いシティのバイカーたちのことを散々文句言ってたけど、わたしは胸のどきどきとイヤアな気分が治まらないままロードアイランドに行った。 憂鬱な気分は消えなかったけど、ロードアイランドはいつものように楽しかった。 あったかいレイクのビーチで泳いで、半分水に浸かりながらキャッチボールして、ブランケットに寝転がっておしゃべりして、わたしはナターシャとデイビッドの写真をたくさん撮った。夜には映画を観て、デイビッドの昔のショーのビデオをいっぱい観た。デイビッドはキーボードとバイオリンを積んで来てくれて、一緒に演奏もした。 月曜日の夜に帰る予定だったけど、火曜日の天気予報が最高だったから1日延ばした。 帰りの高速で、後ろに座ってたナターシャがシージャーのような発作を起こす。慌てて高速を降りてナターシャを降ろしたけど、ナターシャは立てずに荒い息で頭を振って目をぐるぐる回したままだった。お水を飲ませてってわたしは叫んで、デイビッドはナターシャの口を無理矢理開けてボトルから水を流し込む。「ナターシャはこのまま死んでしまう? ねえ、ここで死んでしまう?」。ナターシャの頭を抱えてデイビッドはわたしに言ってるのかナターシャに言ってるのか誰にともなく言ってるのかパニックになりかけてる。わたしは泣きそうになりながら何も答えられず、ナターシャを抱きかかえて落ち着かせる。心臓の鼓動と息づかいを確かめながら長いこと抱いてナターシャに「大丈夫だよ、大丈夫」って繰り返してた。ナターシャは落ち着いてった。 何台かの車が止まって、近くの救急の動物病院を教えてくれた人がいたけど、行かなかった。行かなくても大丈夫だと何となくわかった。それからわたしは後ろのシートにナターシャを抱いたまま座ってうちまで帰った。ナターシャはぐったりわたしの膝に体を預けて、でも息も心臓の鼓動も表情もすっかり落ち着いてた。ハルシネートしたみたいにぐるぐる回って焦点がどこにも定まらなかった目も、わたしの顔をじっと見られるようになった。 デイビッドが抱きかかえてアパートに連れてって、わたしはお砂糖入りのお水を手にすくって飲ませる。ナターシャは自分からわたしの手を舐めてお水を飲んでくれた。 「きみがいなかったら僕は気づかないまま運転し続けてたよ。きみがナターシャの命を救ってくれた」。デイビッドは何度もそう言ってくれた。どうしてそんな発作が起こったのかわからない。ただ、自分の体の変化に気づいてるナターシャがどんなちっちゃなことにだって敏感でナーバスになってるのだけは分かる。 そしてデイビッドの恐れも心配も分かる。わたしはデイビッドの額にたくさんキスして、デイビッドを抱き締めて眠った。そうしたかった。いつもデイビッドがしてくれるように。 今朝、ナターシャはすっかり元に戻ってた。わたしはシリアルにミルクをかけてバナナをちぎって入れたごはんをナターシャに食べさせた。ナターシャはペロッと平らげてくれた。 デイビッドはクライアントに会いに行って、わたしはポリスレポートを警察に取りに行って、待ち合わせたブロードウェイのベンチでもう一度会ってからわたしは帰った。デイビッドは立ち上がってほっぺたにバイのキスをくれた。 ナターシャにはこれからこういうことがきっと何度も起こる。デイビッドのために出来るだけその場に居合わせていてあげたい。それは無理な話だけど。 Another happy day to Natasha. 一日一日が another happy day でありますように。 これからずっと、ナターシャがここで生きていられる毎日が。 そしてわたしにも。それからデイビッドにも。 -
|
|