明日から行ってくるよ - 2004年01月24日(土) 朝デイビッドのアパートを出て車のところに行ったら、なかった。車が。 停めた場所違ったかなと思ってうろうろ探したけど、やっぱりどう考えても停めたところはそこで、そこにはわたしの車がぽっかりなかった。トウされたって気づいた。走ってデイビッドのアパートに戻って、まだ寝ているデイビッドに叫ぶ。「車、トウされた!」。 デイビッドは飛び起きて、わたしにレジストレーション・カードを仕事場でコピーさせて、NYPDのトウ・パウンドのサイトで探してみるからきみは地下鉄で仕事に行きな、って言った。土曜日の地下鉄の便は悪くて、30分遅刻した。ボスのいないウィークエンドでよかった。電話したら、わたしの車はやっぱりトウされてて、デイビッドはNYPDのそのトウ・パウンドの場所や罰金の値段や車を受け取る手続きやそういうのを書いたのを病院のオフィスにファックスしてくれた。 仕事が終わってから、今日もまたうんと低い気温の中、地下鉄に乗って車を取りに行く。トウ代185ドル。駐禁チケット115ドル。ちゃんとサインのポールを越えないように停めたのに、雪の下に埋まった横断歩道の白い線が見えなかった。 もう雑巾みたいな気分だった。 昨日はまたデイビッドとケンカして、朝の4時までどこまで行っても交わらない平行線の会話を繰り返して、せっかく一週間ぶりに会ったのになんでこんなに言い争わなくちゃなんないんだろと思ったらボロボロボロボロ涙がこぼれて、ベッドの上で膝抱えて子どもみたいに泣きじゃくった。 そしたらデイビッドがわたしの背中をさすりながら、なんでそんなに突然子どもみたいに泣き出して止まらないのか聞く。わたしの心の中にあるものがなんなのか聞く。そのうち「ほら、話してくれなきゃわからないよ。子どもだってお母さんに理由を聞かれたらちゃんと答えるだろ? マミーに話してごらん。先生に叱られた? テストの点が悪かった? 意地悪な子がいるの? 誰かがいじめた?」。 笑いもせずにそんなこと言うデイビッドの目は、ほんとにお母さんみたいに深くて深くてあったかくて、わたしも笑わずに答える。「デイビッドが意地悪なの。デイビッドのやつがいじめるんだ。デイビッドはあたしのことがキライなんだ、きっと」「そうかな。デイビッドはきみのことが好きだよ」「じゃあなんであんななの? あたしはデイビッドが好きなのに」「デイビッドが好きなの?」「きらいなとこもいっぱいあるけど、それでも好きなのに。だからあたしどんなにケンカしてもちゃんと分かり合いたい。諦められない。もうこんなのやだってやめちゃうこと出来ない。ちゃんと分かり合いたい」。デイビッドはわたしの背中を引っ張って「もういいよ、わかったよ」っていつもみたいにわたしを腕の中に抱えた。あったかくて心地よくて、そのまま泣きながら眠った。 それでも雑巾みたいな気分だったのは、そうやってケンカしては半分仲直りして、会ったらまたケンカしてそれでまたなんの解決もないまま半分仲直りして、やっぱりデイビッドとわたしはどこにも向かうことが出来ないんだ、これは間違ってるんだ、ってそんな気がしてきた上に、駐車違反で車持ってかれちゃって持って行かれ代と罰金払わなくちゃいけなくなって、そしてその上もうこの寒さにいいかげんくたびれて来ちゃったから。 きーんと寒いのが好き。なんてもう言ってらんない寒さな毎日。嫌になるより、くたびれる。 「無事車が戻ってうちに帰ったら電話しておいで」って言ってくれたデイビッドに電話する。携帯の電池が切れてたから外からかけられなかったから。 明日からのスキー旅行のプランをたくさん話してくれた。 「それから旅行のあいだに僕たちのこれからのことをちゃんと話し合おうよ。今までいつも途中で終わったままだったから」。 デイビッドがそんなこと言い出すなんてびっくりした。そして怖かった。 「これからのことって何? どういうこと?」。コワゴワ聞いたら「怖がるようなことじゃないよ。もう会うのをやめようなんて言わないよ。そういうことじゃなくて」。 お互いが求めてることを分かり合わなきゃ。分かり合えなかったら? 分かり合えるよ、同意し合えないことがあったとしても、理解し合えるよ、正直な気持ちになって理解し合おうよ、それぞれがそれぞれに望んでることをちゃんと正直に話し合おう。 そうだ。そうしなきゃ。食い違いばっかで悲しくなるかもしれない。それでもそうしなきゃ。そうしたい。やっぱり怖いけど、怖くても。 「きみのための休暇だよ」ってデイビッドは言った。 行ってくる。昨日は「もう行かない」とか思ってた。でも行ってくる。ジーザス連れて行ってくる。守ってください。 -
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