天使に恋をしたら・・・ ...angel

 

 

苦しいくらい - 2003年08月01日(金)

タンゴは、ロシア系さんのおかげですごく上達したような気がする。ミランゴも上手になった。アップビートのミランゴがとても楽しくて、ミランゴがかかると「やった」って思う。

久しぶりにロシアンの女の子が来てた。「男見つけに来てるんだ。じゃなきゃあ、お金払って毎週タンゴ踊りになんか来ないよ」なんて平然と言ってた彼女がしばらく来なかったから、てっきりどっかで「男」見つけたんだと思ってた。ロシア系さんのことがお気に入りみたいでいつもべったりしてたけど、今日はとりわけキャアキャアベタベタくっついてた。ロシア系さんがわたしと踊ってると、向こうの方からなんか叫んでる。ロシア語だからわかんない。「なんて言ってるの?」って聞いたら「『あたしとは踊ってくれないの?』ってさ」って、ロシア系さんが困った顔で言う。「踊ってあげなよ、彼女と」ってロシア系さんを押しやった。

ロシア系さんは今日も終わってからわたしを誘う。「だからね、会いに行く人がいるの」「いつものように?」「そう、いつものように」。階段を降りたらロシアンの女の子が待ってて、飲みに行こうよってロシア系さんを誘う。「あなたも来るでしょ?」ってわたしに言うから「約束があるの」って答えて、「誘ってくれてありがと」ってハグしながら「来週もおいでよね」って言った。ロシア系さん、彼女とくっつけばいいのに。彼女はものすごく背が高くて、のっぽのロシア系さんとちょうど釣り合う。


デイビッドは、リンカーン・プラザ・シアターに連れてってくれた。小雨が降ってたから傘を持ってったけど、タクシーを拾う。シアターの隣りのコーナーストアで、わたしはコーヒー、デイビッドはジンジャーエイルを買った。傘の中にコーヒーを隠してどきどきしながらチケット切りのおじさんの前を通る。「The Housekeeper」ってフランス映画だった。可愛くて可笑しくて切なくてちょっと痛かった。終わり方があっけなくて、引きずらないから余計に痛かった。綺麗な映像だった。外国映画はいつも綺麗。

「恋はいつも女に痛みを与える」って、B5 のナースがこのあいだ言ってた。そっくりそのままロジャーに言ったら「男にもだよ」ってロジャーは言った。そんな当然なこと、わたしは忘れてた。少なくとも、ここに来てからのわたしの恋は、いつもわたしだけが痛い思いをしてるみたいだったから。男は痛くないふりするのが上手。女は年を取るほど痛くないふりが出来なくなって、男は年を取るほど痛くないふりが上手くなる。そう思う。

雨は相変わらず降ってたけど、傘をささずにお店の軒下やカフェのパティオのパラソルをくぐりながら、ふたりでピョンピョン走る。「どうやって帰ろうか」ってわたしに聞いたと思ったら、デイビッドは通りの向こうにいきなり走ってく。バスが来る。慌ててわたしも追いかける。「このバス、どこに行くと思う?」「あなたんちのすぐ近くのあのバス停?」「近い」「どこ?」「この時間はね、バスは止まって欲しいところに止まってくれるんだよ」。

バスの中で携帯が鳴った。またバッグを手探りしてるうちに切れた。少し経ってから ID を見たら、やっぱりカダーだった。メッセージが入ってた。「長いこと話してないね。電話してよ」。取れたらよかったって思った。「今デイビッドと一緒なんだ」ってデイビッドの隣りで言えたのに。

デイビッドが運転手さんに場所を告げて、バスは本当にデイビッドのアパートの前で止まってくれた。

デイビッドがナターシャをトイレに連れ出してるあいだ、わたしはお茶を煎れる。また携帯が鳴ってカダーだと思って取らなかったら、デイビッドだった。何かあったのかと思ってかけ直す。「今あたしに電話した?」「うん。メッセージ入れた」。

『僕はナターシャを散歩させてて、きみはうちでお茶を用意してる。すぐ戻るよ』。

笑っちゃった。


わたしの寝る用意が出来るまで待っててって言ったのに、着替えて歯磨きして顔洗ってベッドに行くと、デイビッドはもう半分眠ってる。腕に飛び込んで「もう寝たの?」って聞いたらおでこにキスしてくれる。洗濯したての匂いのシーツにくるまって、わたしはなかなか眠れない。ベッドをそっと抜け出してリビングルームのカウチに座って、また少し切なくなる。切なくて、帰っちゃおうと思って洋服に着替えた。それでもまだカウチに座ってた。

神さま、わたしを安心させてください。安心させてください。安心させてください。

ベッドからデイビッドがわたしを呼んで聞く。「ねえ、大丈夫?」。デイビッドの寝顔を見たら、一瞬息が止まってため息みたいな吐息がこぼれる。帰れない。心配させるから。洋服のままベッドに滑り込んだら、デイビッドは眠ったままわたしを抱き締めた。苦しいくらい抱き締めた。苦しいくらい、ずっと抱き締めててくれた。


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