so blessed - 2003年05月04日(日) こんなに教会に行きたいって思ったことはなかった。 自転車レースのせいであちこちの道路が閉鎖されてて、少し遅れて教会に着く。 クワイアが始まっててみんなが立ってゴスペルを歌ってるから、遅れても目立たなくて済んだ。案内係の人に連れてかれた席にそのまま立って一緒に歌う。アニーの教会のゴスペル・クワイアの方が素敵だと思ってたけど、いつのまにかこの教会のゴスペルがとても好きになってる。口からティラランって花びらが飛び出すマウスウォッシュか歯磨きペーストかガムかなんかのコマーシャルみたいに、まるでみんなの口から歌と一緒に何かが溢れ出してる気がして、思わず天井を見上げたりしてた。 わたしの口からだけ何か汚れたものが飛び出してるような感じがしたけど、吐いちゃえ吐いちゃえ、わけのわからないこの変な気持ち吐いちゃえ、って一生懸命歌ってた。からだの中が空っぽになって、自分の口から出てった不安みたいな怯えみたいな灰色した煙が、みんなの声に紛れて消えてったのが見えたようだった。 Revelation の章の最後の方の節を、今日は聖書を食い入るように読みながら聞いてた。聖書のあとのお話を、身を乗り出して聞いてた。 死ぬときには何もかも失って死ぬ。この世のどんな幸せも愛も肉体の美も全部失う。どんな愛に巡り会ってどんなに幸せな結婚をしてどんなに素晴らしい子どもを育てても、全て一時的なものでしかない。人はそれらを失いながら、何もかもなくなった裸の姿で神さまの前に立つ日の準備をする。それが死ということ。たとえそれが残酷でも神さまはただその真実を教えてくれる。そんなお話だった。それが哀しいとか虚しいとかそういうことではなく、だからどうしなきゃいけないとかそういうことでもなく。 この世で生きていることが一時的なことだとすれば、百年か千年か二千年経ってもう一度出逢えて、それから永遠に永遠に愛し合える天使のことはやっぱり本当だったんだって思った。それから、あの娘が天国の永遠の幸せの中で今生きてることも。 ミサが終わってから今日は「シングルの会」があって、待ってるあいだにヴェロニカに会ってびっくりした。病院の Dr. ライリーのクリニックのクラーク。おしゃべりしてる間にヴェロニカが「結婚しなさいよ」なんて言うからそれもびっくりした。「あたしね、そういうこと誰かに言われたばっかりなの」って笑った。 夕方に帰って、お掃除をしようと思ってたのに、金曜日からの疲れが溜まってたせいか眠ってしまった。電話で目が覚めた。「Hi. How are you?」っていきなり聞こえて「元気よ。あなたは?」って自動的に返事してから、カダーって気がついた。 マスターの卒業試験にパスしたって言ってた。簡単にパスしたのかと思ってたら、24人のうち11人しかパスしなかったって。嬉しかった。カダーは別になんでもないみたいに言っててそれがカダーらしかったけど、わたしはものすごく嬉しかった。授業料がまだ払えないまんまで、だからお金を払うまで成績表も卒業証書も発行してもらえないらしい。だけどそんなことなんでもない。カダーは神さまの恵みを授かってる人なんだ。そう思う。いつか、「僕は神さまと仲のいい友だちだからね」って、お祈りもしないクリスチャンのくせしてそんなこと言ってたけど、カダーは神さまを愛してて、神さまに愛されてる。ほんとにそう思った。 「仕事もきっと見つかるよ。あたし心配してない。あなたは悪い人だけど、神さまに恵まれた人だから。You are blessed, so blessed. あたし、あなたを誇りに思う」。 そう言ったらすごく幸せな気分になった。カダーは笑ってた。 水曜日にまだもう一つ最後の試験があって、それが終わったらまた電話するって言ってくれた。 もう、結婚したくないなんて思わない。結婚したいともしようとも思わない。 カダーとデイビッドを比べることもどちらか選ばなきゃいけないって思うことも、しない。しなくていい。 生きてることはちっぽけなことだから。それがどんなものだって、なんでもない。怖がる必要なんかない。でも怖くなったってかまわない。このちっぽけな人生を神さまの手の中で生きるだけ。全てを失くして裸になって、あの娘のいるところに導かれて、あの娘に会って、天使と永遠に永遠に結ばれる日まで。 デイビッドにメールを送った。 「電話もないしメールも来ないから心配してるの。生きてる? ナターシャは元気?」って。 「電話したよ。元気だよ」って短い返事が来た。 -
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