| 2005年08月17日(水) |
「空中ブランコ」など |
出勤しても仕事がなさそうな気もしたし、休んでもよかった。 しかし、出校日や始業式の前日に休んでしまうのは、どうも落ち着かない。 部活がらみで多忙だったころは、前日だろうが何だろうが出勤していて、 選択の余地がなかったものだから、そのころの精神的な名残かもしれないが、 割と暇になってから、出校日の前日に休んだら仕事が飛び込んでいて、 翌日出勤してから大焦りに焦ってバタバタしたこともあったので、 特に用事がない限り、とりあえず出勤してみることにしている。 何もなければ、途中で休暇をとって帰ってしまえばいいし、読書でもいい。 きょうも、補習の準備をし、楽譜の点検でもしたら、 あとの時間は「空中ブランコ」を読んで過ごせばいいだろうと、出勤した。
職員室に入ったら、来ているのは私の他に5人ほどである。 教頭もいない。 机の上に、本屋が図書館用に置いていった雑誌が積んであった。 一番上に乗っているのが文芸春秋で、芥川賞受賞作掲載、とある。 中村何とかという若い作家の「土の中の子ども」という作品である。 補習準備などよりも、まずはこれを読むことにした。 いつも、書き出しがおもしろくないなぁ、と思うのだけれど、 きょうのはなかなか読ませる書き出しである。 暴走族に因縁つけられてめった打ちにされる心理に興味もかき立てられて、 そのまま読み耽っていた。 明快な文章である。 しかし、昨日読んでいた直木賞作家の旧作とどう違うのかな?とも思った。
そこへ、去年までの図書主任が現れて、仕事を教えてくれた。 何と、きょうはそのために来るべきだったのだ。 きょう来た甲斐があったわけだ。 明日の読書感想文提出に備えて、 お願い&名票を貼り付けた角封筒を用意して配布しておくのだという。 そういえば、去年そういうのをもらってたなぁ、、、と、 さっそくその作業を1時間近くかけて済ませた。 不意に湧いたような仕事だけれど、きょうの出勤の目的が果たせてうれしい。
それからまた「土の中の子ども」を読み続けた。 生きる意欲が湧かない同棲する男女の話が延々と続いている。 女の方がわりとサバサバしているので救われるが、こういうのは好きでない。 しかしまぁ、それがどういう経歴から来るのかとか、 最後は多少希望のある結末になるだろうが、どんな解決かな? と、 そんな興味で、我慢して読み続ける。
昼になったので、「空中ブランコ」を持ってランチに出て、2編を読んだ。 昨日読んでいた「イン・ザ・プール」の続編の連作小説で、 精神科医伊良部の話だが、「イン・ザ・プール」より格段におもしろい。 昨日は、まぁまぁおもしろいながら、笑えるほどではなかったのに、 今度は思わず吹き出しそうになるので、他の客の視線が気になって困った。
学校に戻って、また芥川賞を読み続けた。 職員室の照明が暗くて粗悪なので活字がとても読みづらい。 主人公の前歴が明らかになる。 幼児期に両親に捨てられ逃げられて、親戚の世話になって虐待された。 山中の土の中に生き埋めにされて、諦めかけたが、自力で這い出した。 死ぬ直前に救われて、施設で育てられた。。。 しかし、その深層心理の叙述には、読みながら辟易した。 あんまり言葉を費やしすぎると、限定的で観念的になってしまうぞ。 結局、後半は類型的な展開になってしまった。 登場人物の存在感も希薄なまま。。。。
その後は「空中ブランコ」を読み続けて、10時ごろには読み終えた。 これはおもしろいし、結末がうれしくて涙ぐむこともあった。 精神疾患者の話という点では、さっきの芥川賞と似たようなものなのだが。。
1 空中ブランコ・・・空中ブランコフライアーの悩み 2 ハリネズミ・・・・やくざの若頭の悩み 3 義父のヅラ・・・・学部長の娘の婿となった大学病院医の悩み 4 ホットコーナー・・プロ野球の一流三塁手の悩み 5 女流作家・・・・・人気女流作家の悩み
それぞれの登場人物がそれぞれの悩みと闘う姿もおもしろいのだが、 それに対する精神科医伊良部の処方がおもしろいだけでなく、 伊良部の言動が回を追うごとにかわいくなっていくのもおもしろい。 人間の心というものは、一筋縄ではいかないものである。 この作者は、そういうことを認識した上で書いているようだ。 だから、伊良部のような破天荒の医者が、作品世界に溶け込んでいるのだ。
ちなみに、精神科医伊良部の治療法は、患者と無邪気に遊ぶことである。 患者が前向きに生きられるようになった功績が、自分であろうがなかろうが おかまいなし、、、そんなさわやかな心理小説なのである。
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