TENSEI塵語

2004年10月14日(木) 「グッド・ラック」

6月に発売されたアレックス・ロビラ&フェルナンド・トリアス・デ・ベス
の「グッド・ラック」を読んでみた。
本屋で大騒ぎみたいに積まれていた本ではあるが、
そこにあるメッセージは、つまるところ、
「幸運をつかむには下ごしらえが必要だ」というだけのことのようだ。
昔から「努力」という言葉で言われていたことを、
「下ごしらえ」という言葉に置き換えただけだ。
ただ、この寓話の良さは、森に育つはずのクローバーを、
あるものとして見つけようとするのではなく、
自ら下ごしらえをして、育つようにさせて獲得するところにあるようだ。
「運」はあちこちにばらまかれるが、それを「幸運」としてつかむのは、
入念に下ごしらえをした者だけである、というわけだ。
その幸運を獲得した騎士にしても、あとひとつの下ごしらえを
思いつかずにいたら、それまでの下ごしらえも無駄になっていた。

しかし、世の中には棚ぼた的幸運というのも存在する。
その稀有な実例の報告が、人の心を曇らせるわけだ。

私の場合、凝り性なくせに、万事に渡って中途半端でいい加減なもんだから、
大きな幸運は訪れないけれど、まあまあ凝り性だっただけの、
それだけに相応しい分の幸運のいくつかは拾えているような気がする。
世間的に見れば、ささやかな幸運の寄せ集めみたいなものだろう。
無駄でしかなかったと思われるような苦労もあったけれど、
ま、人生というのは、何が福となり何が禍となるか、はかりしれないものだ。
同じ運命でも、見方を変えれば福にも禍にもなるものだ。


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