最近またタンゴを好んでよく聴いていたのだが、 聴いていてもっとも心奪われる音色はバンドネオンの音色である。 オーケストラ曲一辺倒だった中・高時代はオーケストラ的タンゴに惹かれた。 バンドネオン中心のバンド的演奏は安っぽくてイヤだと思ったものだ。 今はもうそういうもったりしたタンゴは聴けなくなっている。 バンドネオンの醸し出すそこはかとない郷愁に心惹かれる感じである。
その形状を思い浮かべるだけで、さまざまな謎に包まれる。 とにかく、鍵盤がないのだ。 右手は鍵盤、左手はコードボタンのアコーディオンとはまったく違うらしい。 左右に多くのボタンが付いているだけだ。 いかにも弾きにくそうなのに、最近聴くタンゴでは、 いわゆるアドリブソロ的なメロディーを華麗に弾いていることが多い。 アコーディオンのように楽器を体に固定するわけでなく、 膝の上に置いただけで蛇腹を開け閉めしながら、 ボタンを押しながら演奏しているわけだから、至難の業のように見える。
今夜は、また夜中になってから、タンゴについての番組を見た。 タンゴ発祥の地は、約100年前の小さな港町の酒場、というあたりも とてもおもしろかったのだが、 それ以上に、バンドネオンについての話がおもしろかった。
今あるバンドネオンのほとんどはドイツ製である。 そのメーカーたちも、第二次大戦後はもう生産をやめてしまった。 アルゼンチンで今も生産されているわけではないのだそうだ。 アルゼンチンには修理屋がわずかに存在するだけで、 中古品を修理しながら回しているだけのようである。 楽器メーカーのカタログを見ても載ってないはずである。 (後でサイト検索してみたら、今も製造しているメーカーは 数社は存在するようである) ヨーロッパで発明されて使われていたころは、 携帯オルガンとして、聖歌など歌うときに使われていたようだ。 それが今では、タンゴ専用の楽器になっているわけだ。
ボタンの疑問についても少し答えてもらえた。 何という驚き!・・・アルゼンチンタンゴのバンドネオンは、 音階がバラバラに配置されている上に、 蛇腹を開くときと閉じるときでは、同じボタンでも音が変わるのだという。 なんという厄介な構造なのだろうか。 けれども、どの奏者を見ても、実に気持ちよさそうに弾いている。 残念ながら、なぜそんな構造になっているのかという説明はなかった。
もう少しこの楽器について調べてみたくなったのだった。
|