TENSEI塵語

2001年09月04日(火) 「風の谷のナウシカ」完全版

昨日と今日とかかって、「ナウシカ」全編を読み終えた。
たぶん、これが4回目である。
でも、毎回初めてのように読み返す。それだけ物語が錯綜している。
1冊6千円近くする上下巻2冊本の愛蔵版を買ってから全部読み返したのは初めてだ。
重たいけれども、大きくて見やすいのでありがたい。

それにしても、本当に壮絶な物語だ。
闘いたくない、殺したくない、心で結びつきあいたいと願うナウシカが、
どうしても、人間の愚かな闘いの中に巻き込まれて行く。
けれども、ナウシカによって、結局はみんなが結ばれて行く。
「森の人」なる不思議な人物にも救われる。
(7巻本が何ヶ月かごとに刊行されるたびに買って読んでいたころは、
 次々に新しい種族や不思議な人物が現れるたびに、
 いったいこの話はどこまで行くのか、解決があるのかと不安に駆られたものだ)

最後のシュワの墓所の主との闘いは壮絶を極める。
「あの時代、どれほどの憎悪と絶望が世界を満たしていたかを想像したことがあるかな?
 数百億の人間が生き残るためにどんなことでもする世界だ。
 有毒の大気、凶暴な太陽光、枯渇した大地、次々と生まれる新しい病気、夥しい死。
 ありとあらゆる宗教、ありとあらゆる正義、ありとあらゆる利害、
 調停のために神まで造ってしまった。とるべき道はいくつもなかったのだよ。
 時間がなかった。私たちはすべてを未来に託すことにした。
 これは旧世界のための墓標であり、同時に新しい世界への希望なのだ。
 清浄な世界が回復したとき、汚染に適応した人間を元に戻す技術も
 ここに記されてある。・・・」
「絶望の時代に、理想と使命感からお前が造られたことは疑わない。
 その人たちはなぜ気づかなかったのだろう、清浄と汚濁こそ生命だということに。
 苦しみや悲劇や愚かさは、清浄な世界でもなくなりはしない、
 それは人間の一部だから。。。。
 だからこそ、苦界にあっても、喜びやかがやきもまたあるのに。
 あわれなヒドラ、お前だって生き物なのに、浄化の神として造られたために、
 生きるとは何か知ることもなく、最も醜いものになってしまった」
「お前にはみだらな闇のにおいがする。
 娘よ、お前は再生への努力を放棄して、人類を亡びるにまかせるというのか」
「その問いはこっけいだ。私たちは腐海とともに生きてきたのだ。
 滅びは、私たちの暮らしの、すでに一部になっている」
「人類は私なしには亡びる。お前たちはその朝をこえることはできない」
「それはこの星が決めること。。。」
「虚無だ!! それは虚無だ!!」
「王蟲のいたわりと友愛は虚無の深淵から生まれた!!」
「お前は危険な闇だ。生命は光だ!!」
「ちがう! いのちは闇の中のまたたく光だ!!
 すべては闇から生まれ、闇に帰る。 お前たちも闇に帰るがよい!!」

「お前は悪魔として記憶されることになるぞ。希望の光を破壊した張本人として!!」
「かまわぬ! そなたが光なら、光などいらぬ!!
 巨大な墓や下僕などなくとも、私たちは世界の美しさと残酷さを知ることができる。
 私たちの神は1枚の葉や一匹の蟲にすら宿っているからだ!!」

この闘いが終わったとき、ナウシカはもう1度青き衣で金色の野に降り立つ。
チャルカのつぶやき、、、
「あの服は。。。 王蟲の血よりも青い。(墓の体液の色だ)
 灼けただれた大地が、夕日を浴びて金色に輝いておる。。。」

とにかくこれは、悩み苦しむ救世主の物語なのである。
 

 


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