Fクンが「今度送るよ」と予告していたものが届いた。 夏休みに翻訳していたカントの論文がメールで送られてくると思っていたら、 メールでなく、小包で届いたのは春に刊行されたカント全集の14巻だった。 「世界市民的見地における普遍史の概念」とか「啓蒙とは何か」とかを彼が訳している。 他に「理論と実践」とか「万物の終わり」「永遠平和のために」などが入っている。 三批判書なんて、もうこんな生活しているとなかなか読み返せないけれど、 こういう論文は1度じっくり読んでみたいと何年か前から思っていた。 ありがたいことである。
礼状の返信にFクンもこう書いていた。 「是非じっくり読んでください。特に啓蒙論文と普遍史の理念は、 短いながらも内容が豊富です。 普遍史の理念の方は、上智の哲学科のゼミで読んだのが初めてでした。 当時は、あまり関心を持てませんでしたが、現在ではもっとも好きな哲学書です。 日々の生活で苦しい思いをするときは、いつもこの作品を読むことで乗り越えています。 また、啓蒙論文は18世紀ドイツ語散文の最高傑作と呼ばれているものです。 これによって、トマージウス以来の啓蒙理念が総決算されました。 すべての行が力強い表現で、人間の精神を奮い立たせてくれます」
実は、前に会ったときにも彼から2冊の訳書をもらっている。 スピノザとカントの研究書の翻訳だったけれど、ざっと目を通したものの、 特にスピノザは、入門書らしいのに、中座してしまった。 そのうちに、と思いながら、それっきりになってしまった。 きょうも、夕食前の気ぜわしい中で、2つの論文に目を通したのだけれど、 もっとよくわかるためには、そのうちに、もっと落ち着いて読もう、ということになる。 こういう「そのうちに」が反故にならないよう、ちゃんと銘記しておこう。
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