たりたの日記
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2007年03月09日(金) |
東北旅日記3 < 賢治の家 > |
3月4日朝8時。盛岡駅前のビジネスホテルの前に立っていると むこうから親しそうにこちらへちかづいてくる人影。
数年前から知っていて、それでもこの時はじめてお目にかかる、たんぽぽさん。優しく静かな風に包まれている人。
田畑の広がりを、遠くの早池峰山を眺めつつ車は花巻市へ。
はじめに訪ねたいところは羅須地人協会の建物。 だれもいない田畑の中、誰もいない道を進み、ひっそりとした羅須地人協会の門を入る。
庭仕事をしていたおじいさんがたんぽぽさんに話しかけ、たんぽぽさんは答えているのだが、 わたしにはそれは聞いたことのな外国語のように聞えてしまう。純粋な花巻弁だとたんぽぽさんは言う。
今度はわたしにも分かる言葉で話しかけてくれる。 「賢治先生のことなんか、なあんも知らん人が団体でくる」とおじいさんは文句を言いたい風だ。
映画や写真で見知った建物がそこにあった。
「下ノ畑ニ居リマス」の黒板の文字。 古いオルガンに丸い木の椅子。
ここで賢治は農業青年を集め学習会をし、夜はひとりで、あのゴーシュのようにチェロを練習したのだろうか。
今日のうちに遠くへ行ってしまおうとしているトシ子のために、 賢治はこのガラス戸を開けて、外に飛び出し、真っ白な雪をお椀に入れたのだろうか。
<部屋の片隅にはリードオルガン。これを賢治は弾き、歌が生まれたのだろうか。 オルガンは片方のペダルはまだ踏める。キーを押すとリードオルガンのなつかしい音が鳴る。 ふと賢治の作った「星めぐりの歌」が頭に浮かぶ。メロディーをさぐりながら弾いてみた。 歌も覚えている歌詞のところだけ歌ってみる。
静かだった。わたしたち二人の他、誰もいない、早朝の賢治の家。
♪ 星めぐりの歌
あかいめだまの さそり ひろげた鷲の つばさ あをいめだめの 小いぬ、 ひかりのへびの とぐろ。 オリオンは高く うたひ つゆとしもとを おとす、
アンドロメダの くもは さかなのくちの かたち。 大ぐまのあしを きたに 五つのばした ところ。 小熊のひたいの うへは そらのめぐりの めあて。
*このページ に星めぐりの歌のいくつかの歌曲ファイルがあって、歌を聴くことができます。
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