たりたの日記
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2006年11月16日(木) |
「ロンリー・ウーマン」を読みながら |
ふと、高橋たか子の本を読み返したくなって、書架をあさっていたら、買っておいて読んでいない本が出て来た。
高橋たか子「ロンリー・ウーマン」の文庫版
ロンリー・ウーマン お告げ 狐火 吊橋 不思議な縁
と5つの独立した短編小説がそれぞれにどこかで繋がっているという長編連作。 主人公はみな、孤独な女たち。
高橋氏の最近の作品にはどこかまるごと没頭してしまえないような距離感があって、しばらく離れていたのだが、この時期の小説はやはり好きだ。 他のどの作家とも違う、彼女独自の世界は揺るぎない。 その突き放したような冷徹な視線には甘さがない。自己顕示とも自己主張とも遠い。なぜなら自分をも突き放しているから。 決して楽しい話、心温まる物語というのではない。この5編の共通して流れているものは、そのタイトルが示す通り、「孤独」なのだから。それも感傷や作りごとの入り込む隙のない、ほんものの孤独。 私的なものから遠く離れ、むしろこの世俗からもどこか遠い。 だからこそ、そこに慰めがある。豊饒な何かがある。
この作品、ゼミのテキストにどうだろうか。 前から高橋たか子の作品をリクエストしたい気持ちはあったが、好きな作品はどれも長編だったからテキストには無理だった。この中の一編であれば長さとしては大丈夫ではないかしら。 先日の平林たい子の時のように酷評されるとしたら、好きな作家だけに推薦した事を後悔する事だろうけれど、他の人がこの作品をどう読むのか知りたい気がする。
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