たりたの日記
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2006年08月09日(水) |
再会というファンタジー
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日常の中に入り込んでくるファンタジーは魂を生き生きと動かし、そこから始まる何かの音を聴く。 高校時代の同級生のWくんが、実家の近くにある市の役所で働いていると聞いていたので訪ねることにした。
Wくんとは高校の卒業以来、一度も会っていないのだが、ひょんな事からわたしのエッセイ集を読み感想をメールしてくれた。今も時折ウェブ日記を読んでくれている。
さて役所にやってきたものの、18歳の学ラン姿のWくんしか知らないのに、どうやって見つけよう。Wくんは剣道をしていたせいか、いつもぴしりと背中が伸びていた事を思い出した。それから32年後の今、いったいどんな様子になっているのだろうと、たくさん並んだデスクを見渡す。しかし、すぐにWくんが目に止まり、わたしは高校生のように手を振った。
50歳になったね、と話しながらも、32年の長い時間が一瞬の内に消えたかのように、わたしは18歳のわたしになって18歳のWくんに向かい合っている気がした。 ファンタジーは続く。 Wくんは同じ建物の中で仕事をしているクラスメートのRちゃんのところに連れていってくれる。Rちゃんもまるで昔のままの優しい気でさわやかなRわやかなRちゃんだ。三人で修学旅行で東京に行った話しなどをしていると、完全にタイムスリップ。気分はますます昂揚していく。
まだまだ再会のドラマは続く。今度はRちゃんが思いがけない人の所へ連れていってくれた。 大学時代のA先輩。サークル(聖書研究会)の二年先輩で、通学の電車が同じ線だったから電車の中やキャンパスまでの道でずいぶん話をした記憶がある。もっぱらわたしは物知りなA先輩にいろいろと質問しては教えてもらっていたように記憶している。昔の調子で話していると、すっかり忘れていたはずの事がいちどきに記憶の表面に出てきて驚いた。
Aさんの娘さんのことなども聞きながら、いい父親やってるなと思う一方で、話に熱がこもる時のAさんのまなざしの強さは、七半のごっついオートバイに乗っていた20歳の頃Aさんのままだと思う。 不思議な事はいちどきに起こるもの。 Aさんと話しているところへ、やっぱり卒業以来会ってなかっ高校のクラスメートだったEくんが通ってかかり、「おおっ!」とお互いにびっくり。クラスメートの中でもとびっきりユニークな存在だったEくんはその特徴あるオカシミをそのまま保持していた。今度はEくんがKくんを連れて来る。Kくんは12日に予定されている同窓会の世話人。すぐには誰だか分からなかったが、じきに昔のKくんがそこに重なる。 「ねぇ、Eくん、クラス会には来るんでしょ」 とわたしが聞くと、「おまえが来るんなら行かめぇかな〜」と昔のままの憎まれ口をたたく。
みなそれぞれ市役所の重要な役職に付いているりっぱな中堅公務員だという事は承知しながらも、わたしは昔の友人達の若い頃のままのエネルギーがひどく嬉しく、また愉快だった。
昨日の日記に橋も川もわたしの一部分だと書いたが、若い日に同じ教室で同じ 時を過ごした友達もまたわたしの一部分だと気付く。
遠い日の友との再会は遠い日の自分との再会でもある。そしてそこからやってくるエネルギーは日常を超えてふつふつと何かが生まれる勢いがある。
これがファンタジーでなくてなんだろう。
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