たりたの日記
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2週間前、左手、人差し指の第一関節が腫れていてうまく曲がらないことに気がついた。ギターのコードがうまく押さえられなくて、気がついたのだ。 そういえば、このところ、朝目覚めた時になんとなく左手全体がこわばった感じがしていた。これが足や膝なら運動した時に痛めたのだろうと納得もゆくが、左手を突き指した覚えも酷使した覚えもない。 関節炎?、通風?あるいはリュウマチ?これだとやっかいだ。 先週の金曜日、耳鼻科に行ったついでに内科にもかかり血液検査をしてもらった。
今日結果を聞きにゆくと、血液検査は異常なし。通風、リュウマチ、膠原病、そのどれでもないことが判明。内科的には問題がないので整形外科に行って下さいと言われ、整形外科ではまずレントゲンを撮られた。
骨には異常はないに決まっているのに、ここに来るとまずレントゲンを撮られる。断る理由も見当たらないし、レントゲン写真を見みたい気もするので、素直に医者に従う。
医者がわたしの左手の2枚のレントゲン写真をデスクの前のスクリーンの上に取り付けると骨の形がくっきりと浮かび上がった。
美しい・・・・
心が大きく動き、その骨の写真に引き込まれてゆくのを感じる。
以前、足の甲のレントゲン写真をこうして見せられた時にも、心は同じような振幅をした。 花や空、絵や写真、いろいろ美しいものを見る時、心はそれぞれ微妙に異なる動きをするが、足の骨の写真にわたしは何か特別なものを感じて、その写真をいつまでも見ていたい想いに捕らわれた。そして、医者に何とか頼んでその写真を借りてくればよかったと後になって悔やんだ。
医者は
「何も以上はありませんね。腱鞘炎じゃないですか。何か使い過ぎましたか・・・」 といいながら写真をはずそうとする。
「あ、待ってください。あのぉ、お願いがあるんですけれど・・・」
医者はその手を止め、ん?とこちらに顔を向けた。 隣に控えていた看護婦が怪訝な顔をするのが目に入る。
「あの、このレントゲン写真、を写したいんです。」
わたしは医者の返事を待たずにバッグからオレンジ色の携帯電話を取り出して医者に見せた。
「あぁ、いいですよ。レントゲンの写真を撮るのはなかなか難しいかもしれないよ」
わたしは携帯のモードをカメラに合わせながら、不信な患者だと思われないようにと医者に話しかける。
「この前、ここで、足のレントゲン写真を見せていただいた時に、骨ってなんて美しい形をしているんだろうと思ったのです。 骨って、なんだか見ていると吸い込まれるような感じがします。 この手の骨にしても、ひとつひとつのパーツが完璧に美しい形をしていますね」
わたしがそういうと、医者は
「そう言っていただくとうれしいですね」
とあたかも商品を誉められた商売人のように言うと、やおら指示棒を取り上げ、レントゲンの写真を説明しはじめた。
「そうなんです。骨というのはほんとうに良くできている。人間の身体には108個の骨があると言われていますからね。 骨は実におもしろい。 ほら、この部分、ここには8個の骨があるんですよ。」
と、手の甲の根元あたるところを示した。 それは他の指の関節のように、きちんと縦に並んだ骨とは違い、小さなかわいらしい楕円の骨が重なり合うように固まっていて、そこには興奮を誘うような美しさがあった。
人の手首の微妙な動き、人によって様々なニュアンスのある手の動きは、こうした複雑に組み合わさったいくつもの骨から生まれるのかと、わたしは嘆息し、その形をなんとか記憶に留めようとする。
うまく写りますように・・・
「カシャリ!」
かくして、わたしはわたしの左手の骨の写真を自分のカメラに収めることができた。
どうやらこの医者とは気持ちが通じたようだ。医者は骨に興味を持つ患者を胡散臭く思わないで写真を撮らせてくれた。もしかすると彼も骨フェチなのかもしれない。
今度レントゲン写真を撮ったら、絵を描くからとか言って、なんとか写真を借りてこよう。
* そういえば、以前に足の骨のことでわたしって骨フェチという日記を書いてます。よろしかったらどうぞ。
その日記を開いてみたら、投票ボタンを日記の中にくっつけていました。 そのうち、投票を見るのも、ボタンを取り付けるのもめんどうになってきたのですが、また気分を変えて、投票ボタンくっつけてみます。
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