たりたの日記
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2005年12月02日(金) |
田中冬二 「冬の着物」 |
夕食後、もう10時も過ぎてからmGとBook−Offへ。 彼は今夜どうしても村上春樹の本の続きが読みたいらしく、 わたしは今夜のうちにどうしても安岡章太郎の本を手に入れたかった。
これだけたくさんの本の中に安岡章太郎の本が一冊もないのはなぜ・・・ あきらめかけていた時、mGが文庫本を2冊見つけてくる。 「海辺の光景」と「夕陽の岸辺」、両方とも手に入れたかった本。 よかった! 他にもいろいろ買って1400円。 袋いっぱい持っていった本は220円にしかならなかった。
安岡章太郎の本は明日、鎌倉へ行く時に電車の中で読む本にして、 今夜は寝る前に詩が読みたい。
書架の奥から田中冬二の詩集を引っ張り出す。 新潮社の日本詩人全集18という、ずいぶん昔に買った本。 中勘助、八木重吉、田中冬二の3人の詩が載っている。 わたしは八木重吉の詩ばかりを読んでいたのだが、田中冬二の詩は一度くらいは読んだのだろうか、覚えていない。
この詩人のことを思い出したのは、勉ゼミのサイトで先ごろアップされた正津氏の「恋唄拾遺 第26回 田中冬二」を読んだからだった。 そこにある詩を好きだと思った。 銀行員でありながら詩人でもあったという人。 詩集を開いてみると、どの詩からもしみじみとした豊かな世界が広がる。 日本の季節が持っている空気、人の暮らし、 なつかしい匂いのようなものも・・・ 名前のように冬が似合う詩人だと思った。
いくつか心に留めたい詩を見つけたが、ここにひとつだけ書いておこう。
冬の着物
冬になると わたしは綿のたくさんはいった ふるさとの あの手織木綿の着物をきる
それは雪の来た山のにおいがする 石臼に挽く黄粉のにおいがする
それはまた障子に赤くたばこの葉をかいた家 大きな蝋燭の看板のさがっている家 ――祖先からの古風な家々に しずかになにか夜延(よなべ)にいそしんでいる ふるさとびとのあたたかい心がある
田中冬二 詩集「青い夜道」より
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