たりたの日記
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2005年10月28日(金) 合瀬智慧子詩集『おりがみ』」より「おりがみ」

 
     おりがみ

合瀬智慧子


パパはお仕事
ママはお仕事
土曜の夜にはおまえに会いに来てくれる
だから
おまえと二人
おりがみをおろう

おまえが

一番お気にいりの飛行機を
銀色で

おまえには
絶対希望の風船を
ほうずき色の
赤で

おまえ自身の風の中で
クルクル回る風車を
水色で

海も知らない
船も知らない
おまえにとって本物は
ササ船とおりがみだけ
その真実を
黄色で

おまえの手なら
まだ不自然ではない
星を
金色で

二歳になったばかりのおまえが
初めて覚えた色や形を
注文通り
おまえの好きな色で
おまえの好きな形に

だけど
祈りや願いはおりこむまい
こんな小さなこんな軽いおりがみだもの

パパはお仕事
ママはお仕事
土曜の夜にはおまえに会いに来てくれる
それまで
おまえと二人
おりがみをおろう

ひまわりや
サルビアみたいに
直接太陽に触れなくても
すぐに色あせてしまうけれど
おまえと二人きり
この一時の
原色だけの愛を



この詩を読んでいると、山奥の静か過ぎるような、漆黒の夜、橙色の灯火の下で、二歳の甥とおりがみを折っている智慧子さんの姿が浮かんでくる。
こうして彼女が一篇の詩に、その情景を心情を詠い込んだことの故に、読むものはその情景を自分の心に映し、そしてそれを記憶の中に留めることができる。彼女が今この地上にいないとしても、言葉は生きていて、読む人の心の中でまた生きる。
言葉の持つ力・・・


               


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