たりたの日記
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この春から都内のアパートで自活を始めた長男のHと新宿駅で待ち合わせた。 Hに会うのは5ヶ月振りだ。これほど長期間顔を見なかったというのも考えてみれば初めての事だ。
ま、いろいろと書きたい事はあるものの、本人のプライバシーの問題もあるので、彼の近況や風貌、その他もろもろは書かずに、胸の中にしまっておこう。 そう、このことだけ。
「で、君、これからどういう風に生きていこうとしているの」 と、レストランで食事をしながらわたしは聞いた。 それを聞きたいと思ったわけでもなく、大学卒業を前に一足先に社会人を始めた息子に、親として聞いておくべき事なのだろうと思ったからだ。
Hは躊躇なく言った。 「毎日笑顔で暮らすことだよ。で、ぼくのまわりにいるやつらをハッピーにすること。隣人を愛すること。教会に行かなくったって、キリスト教の精神で生きてるって」
何事もすぐに信じてしまう母は、 「それで安心した。それが一番良い生き方だと思うわ」 と、なんとも平和な母子の会話をしたのだった。
その後、Hの言葉をずっと反芻していた。 食べていくための仕事の事、これからの人生設計の事、なんとか人並みにあって欲しいという、言ってみればこの世的な親の願いをかわされた。そんな事よりももっと大切な事があるでしょうと。 確かにその通り。Hの答えに文句のつけようはない。 けれど、果たしてどこまでが本心なのだろう。 彼は、こういう答えをわたしが好み、また安心し、さらには二の句が継げないということを、わたしの息子としての長年の勘で心得ているはずだ。
ま、いいでしょう。Hが日々を笑って生き、自分のまわりにいる人達を精一杯愛して生きていると信じることにしましょう。
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