たりたの日記
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2003年12月20日(土) 旅と読書

15日から19日まで、実家の大分で過ごし、夕べ戻ってきました。
故郷というのはほんとに不思議なものです。
いったんそこへ戻ると、それまですっかり忘れていたような記憶やら、感情やらが押し寄せてきます。ですから、故郷のいると、ここでこうして過ぎてゆくわたしの日常とは違った時間が流れます。

15日は空港から別府へ向かい、大学時代の友人のTと会いました。別府湾を臨むテルマスで、温泉に浸かりながら、それこそ20年振りくらいにじっくり話したのです。過ぎてきた日々のことや、これからのことを。

その後、教師をしているYが仕事が引けるのを待って、大分市内の居酒屋で待ち合わせ。この居酒屋の店長のS君はわたしの新卒の時の教え子です。また奥さんのNちゃんもその時のクラスメートというめぐり合わせ。5年前の二人の結婚式には当時の思い出を話しました。居酒屋にはNちゃんが2歳になる娘を連れて立ち寄ってくれ、すっかり逞しい父と母になっている二人に感動しました。また、居心地の良いその居酒屋でYとTとずいぶん楽しい時を過ごしました。

16日は、前回の日記に書いたように、朝の散歩をし、その後、母といっしょに父の入院している病院を訪ねました。父はわたしたちのことはもう分からないのですが、表情や仕草はとても優しいものがあり、父の日々が穏やかなものであることが分かります。

17日は1日がかりで大掃除。母は整理能力がなくなったと言いまが、それは物を捨てきれないので、ありとあらゆるものが空間を占拠するからです。わたしはもともと整理が下手なのですが、自分のものでないものはさっさと思い切り良く整理ができるものです。実家を訪れる度に、この仕事がわたしの仕事として定着してきました。

18日は母と庭仕事をしました。ちょうど蝋梅の花が開くところで、一足早い、梅の花の良い香りにうっとりとしました。午後から母と電車に30分ほど乗って竹田市へ行きました。この町は作荒城の月で有名な滝廉太郎の生まれ育った古い城下町です。駅の近くに新しく温泉ができたというのでそこへ行き、夜までゆっくり過ごしました。なかなか風情のある良い温泉でした。

さて、旅には読書。行きも帰りも、また滞在中も本を読む時間はたっぷりありました。というか、わたしは旅に出るととても読書に熱中してしまいます。電車の中でも飛行機の中でもずっと読んでいるので、道中で一冊読み終えてしまいます。今回は持っていった「The Purpose Driven Life」を5日分読み、大分市の古本屋で買った、田口ランディーと江国香織の単行本をすっかり読んだ上に、父が40年も前に買った筑摩書房の生活の随筆集というシリーズの本をあれこれ抜き出して読みました。

伊藤整や室生犀星の随筆は文章というか、その語り口調が心地よく、また語られていることもとても興味深く、おもしろかったのです。あまりおもしろかったので、この全集のうち、2冊を持って帰りました。今の作家の語り口と明らかに違う何かがあります。それは古臭くて、固い感じがするものではなくて、むしろ、ずっと肩の力が抜けていて、新しささえ感じます。文章を書く時の立ち位置が何か違うような、語る速度が違うような、そんな印象を持ちました。ここから汲み取れるもの、学べるものは多いと思ったことです。


たりたくみ |MAILHomePage

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