たりたの日記
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ホテルで一人で迎える朝はいつでも好きだ。たとえ夜通し浅い眠りを繰り返し、まだ夜が明ける2時間も前にすっかり目が覚めたとしても。
その朝が休日でなければなおいい。窓ガラスの向こうに仕事へ急ぐ人達が早足で通り過ぎてゆく。 そんな日常の朝の風景とは無関係に、ふわふわしたたっぷりのスクランブルエッグやサラダバーのサラダを時間をかけてゆっくり食べる、そんな非日常がいい。 食事にゆっくり時間を使っても、母との待ち合わせの時間までは2時間ある。フロントに鍵を預けて、そのまま朝の町中を散歩することにした。
この街を歩くのは何年ぶりだろう。
大学の最後の2年間と教員をしていた2年間、この市街地からそれほど遠くないところに住んでいたから、デートに使った喫茶店や仲間とおしゃべりしたパーラーや、一人でよく時間を過ごしたジャズ喫茶などはみんなこの周辺にあった。いわばわたしの青春と言える時期をこの街で過ごしたことになる。
歩いているうちに、すっかり忘れてしまっていた人の顔がひょっと浮かんできたり、お堀の水面を眺めながら覚えのある感情が甦ってきて、感慨深かった。変わらない自分と変わった自分があると思う。
今のわたしが20年後のわたしを想像できないように、あの頃のわたしは今こうしてこの街を歩いているわたしを思ってみることもできなかった。 朝の街を歩いたこの時のことを記憶にとどめておきたいと思った。
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