たりたの日記
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2003年10月19日(日) 教会学校で話した「星のおくりもの」

昨日の日記で吉原幸子の詩集「幼年連祷」のことを書いたが、わたしは自分の幼年時代のいくつかの場面をかなり鮮明に記憶している。

今日の教会学校でのお話でわたしは保育園の年長児の時、クリスマス会で演じた劇のことを話した。わたしの通っていた保育園はキリスト教会の付属の施設で、クリスマスの時期には同じ町にある少年院へ園児がでかけ、お遊戯会をしていたのだが、わたしが6歳の時に演じた劇はグリム童話の「星のおくりもの」というものだった。


          「星のおくりもの」


むかしあるところに、おとうさんもおかあさんもいないひとりぼっちの女の子がいました。すむところもねるところもありませんでした。

きがえの服もなくなってしまったので、女の子は旅に出ることにしました。
持ち物といえば、しんせつな人がくれたパンがひとつだけでした。

ひとりぼっちですから、神さまにたよるほか ありません。野原を歩いていきました。

しばらくいくと、むこうから、ぼろぼろの服を着た男の人がやってきました。
「はらがへって死にそうだ。なにか食べるものをくれんかね」
女の子は ひとつしかないパンをさし出していいました。
「おじさんに神さまのおめぐみがありますように」
そしてまた どんどん歩いていきました。

しばらくいくと むこうから ひとりの女の子がやってきました。
「あたしは あたまがさむくてしょうがない」とその子は泣いています。
女の子はじぶんのぼうしを その子にかぶせてあげました。

しばらくいくと むこうから ちいさな男の子がやってきました。
その子ははだかで寒そうにしていました。
女の子はじぶんのベストをぬいで その子に きせてあげました。

そうして歩いていくうちに 森にさしかかりました。
あたりはもう 暗くなっていました。
そこへ また はだかの子どもが通りかかりました。

女の子は 考えました。
「もう、暗くなってきたわ。森の中ではだれに会うこともないでしょう。
このシャツをこの子にあげてしまおう。」

女の子はさいごの一枚になった下着をぬいで その子にあげました。
女の子にはもうなんにもありませんでした。
女の子はまるはだかで 森の中に立っていました。

するとその時です。
それまで空の上できらきらまたたいていた星が
いちどにふってきたのです。
ぱらぱらと夜空からふってきた星は地面に落ちると
きらきら輝く銀貨になりました。

気がつくと女の子は、いままで見たこともないような
美しい服を着ていました。
そして女の子のまわりにはたくさんの天使がいて
女の子をとりかこんでいました。
女の子はそれからはしあわせにくらしましたとさ。



さて、この劇でこの女の子を演じた6歳のわたしは、みなしごで、さらには自分の持ち物をひとつ、またひとつと手放してゆくことに、劇の中ではあっても、不安で、つらい気持ちがしたことをうっすらと覚えている。星が降ってきて幸せになったという最後のところは残念ながら記憶からストンと落ちてしまっている。しかし、どういうのいだろう。この手放していくということの中にある尊さを、その時、感じ取っていたと思うのだ。それは痛みを伴うものではあったけれど。

なぜ、この話のことを思い出し、子ども達にしようと思ったかといえば、今日の聖書の箇所がマルコ10章17〜31、「金持ちの男」の箇所だったからだ。
イエスに永遠の命を得るには何をすればよいのかと訪ねた金持ちの男はイエスが「自分の持ち物を売り払って貧しい人たちに施しなさい」というと、悲しい顔をしてイエスの前を立ち去った。みなしごの女の子はちょうど、この金持ちの男の対極にあると思ったからだ。

しかしわたしは、その金持ちの男のことを子ども達にこのように話した。

「けれど、それを言うイエスさまの顔はけっしておこったきびしい顔ではなかったのよ。イエスさまは優しく、じっとその男の人を見つめて話したの。男の人はイエスさまから愛されていることが分かったけれど、自分は自分の持っているものを手放すことができなくて、悲しい顔で背を向けて離れていったのね。けれども、もしかすると、その男の人は次の日に、また一週間後に、もしかすると10年後かもしれないけれど、「イエスさま、今わたしは持っているものをみんな人にあげてあなたについていきます!」とイエスさまのところに戻ってきたんじゃないかと思うの。イエスさまのあの顔を思いうかべて、たくさんのお金や財産に囲まれて生きることよりも、もっと幸せな生き方があるって気がついた時に。」

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マルコ10章17〜31
◆金持ちの男
10:17 イエスが旅に出ようとされると、ある人が走り寄って、ひざまずいて尋ねた。「善い先生、永遠の命を受け継ぐには、何をすればよいでしょうか。」 10:18 イエスは言われた。「なぜ、わたしを『善い』と言うのか。神おひとりのほかに、善い者はだれもいない。 10:19 『殺すな、姦淫するな、盗むな、偽証するな、奪い取るな、父母を敬え』という掟をあなたは知っているはずだ。」 10:20 すると彼は、「先生、そういうことはみな、子供の時から守ってきました」と言った。 10:21 イエスは彼を見つめ、慈しんで言われた。「あなたに欠けているものが一つある。行って持っている物を売り払い、貧しい人々に施しなさい。そうすれば、天に富を積むことになる。それから、わたしに従いなさい。」 10:22 その人はこの言葉に気を落とし、悲しみながら立ち去った。たくさんの財産を持っていたからである。
10:23 イエスは弟子たちを見回して言われた。「財産のある者が神の国に入るのは、なんと難しいことか。」 10:24 弟子たちはこの言葉を聞いて驚いた。イエスは更に言葉を続けられた。「子たちよ、神の国に入るのは、なんと難しいことか。 10:25 金持ちが神の国に入るよりも、らくだが針の穴を通る方がまだ易しい。」 10:26 弟子たちはますます驚いて、「それでは、だれが救われるのだろうか」と互いに言った。 10:27 イエスは彼らを見つめて言われた。「人間にできることではないが、神にはできる。神は何でもできるからだ。」 10:28 ペトロがイエスに、「このとおり、わたしたちは何もかも捨ててあなたに従って参りました」と言いだした。 10:29 イエスは言われた。「はっきり言っておく。わたしのためまた福音のために、家、兄弟、姉妹、母、父、子供、畑を捨てた者はだれでも、 10:30 今この世で、迫害も受けるが、家、兄弟、姉妹、母、子供、畑も百倍受け、後の世では永遠の命を受ける。 10:31 しかし、先にいる多くの者が後になり、後にいる多くの者が先になる。」




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