たりたの日記
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2003年08月06日(水) |
佐世保オフ 潮の香りとともに |
一週間ぶりに自宅のベッドの上で目を覚ます。 旅が終わってしまった。何かとても良い夢を見た時のような、少し空中に浮かんでいるような気分のまま、頭と心とで写し取ったビデオをはじめのところまで巻き戻し、ゆっくりと再生を始める。忘れたくないことは、できるだけ記憶の新しいうちにその作業をする。そうすると頭は、その映像を時あるごとに自動的再生を繰り返し、やがてそれは私の中でひとつの心象風景として定着する。
いつもの宮崎と大分への帰省旅行の帰りの便は長崎空港からの便を取った。ネットで知り合ったS教会の地へ行ってみよう。掲示板やメールでやり取りしている人たちと実際に会ってこようと思ったのだ。
去年の12月の初めにふとしたきっかけで、その教会のサイトへ辿りついたのだが、そこのホームページはとてもアットホームで、その土地の言葉で書かれた書き込みは佐賀の祖母や従兄弟達を思い起こさせ、何か親戚の集まりの中にいるような親近感を覚えたのだった。私がごあいさつの書き込みをすると、何人もの方が私のHPを訪ねてくださった。それからは度々、そこを覗くようになり、まだ行ったことのない遠い地でありながら、心理的にはずいぶん近い教会になったのだった。
4日の朝7時に実家を出て、大分市から長崎市までのノンストップ高速バスに乗る。目的地は佐世保なので、長崎市の手前大村インターでバスを降りる。大分市からは3時間ほどである。そこにはメールのやり取りをしてきたKが家族といっしょに迎えに来てくれていた。初めて出会う人達、それなのにすでに良く知っている人達。オフで初めて出会う時の常で、対面した瞬間というのはドギマギするものである。しかし、アジャストメントにはそれほど時間はかからない。一言、二言 話そうとするうちに、それまでに言葉で交流してきた人と目の前に現れた人とがひとつに重なる。オフで初めて出会う時に感じる不思議な感覚。
kファミリーと共に長崎空港に秋田からやって来るSを出迎える。Sとは6月の初めに、夫とともに都内で会った。今回で2回目だが、もうずいぶん昔からの友人のような気持ちがした。
Kの運転する車は大村湾の穏やかな海を見ながら佐世保に向かって走る。車の中で聞こえている音楽はキースジャレットのケルンコンサート。まるで自分の部屋のようにその音の細部まで覚えているこの曲が、初めて出会う人達と、初めて出会う風景の中で共有していることが感慨深かった。これからはケルンを聞く度に、この時の風景が甦ってくるのだろう。
K夫妻の立ててくれたプランでは、佐世保へ向かう道すがら、大村湾が展望できるホテルの温泉へ立ち寄ることになっていた。海と温泉というのは私の大好きな組み合わせだ。いつも帰省の帰りには別府湾を臨む温泉で半日ほど過ごしてから夕方の飛行機に乗ることにしているほど。今回は別府には立ち寄らなかったが、もっと眺めの良い海辺の温泉に入ることができて嬉しかった。週日のせいか、他に客はおらず静かだ。わたしはお風呂に入るとまるで時間の感覚がなくなってしまうので要注意なのだが、初めて会ったばかりのYさん(K夫人)と時間を忘れて話し込んでしまった。
午後4時過ぎに佐世保に着き、Sと私は予約していた駅前のビジネスホテルでチェックインを済ませる。5時20分にはYさんがホテルに迎えに来てくれ、オフ一次会の会場、海辺のビヤガーデンに案内してくれる。静かな入り江に美しい船が何艘も停泊していた。夕暮れ近くの海にはセンチメンタルになってしまうような独特の雰囲気がある。船をバックにしたYさんとSや、海上に映る夕日をカメラに収める。間もなくするとS教会のF牧師はファミリーが現れる。若い牧師夫妻と小さな女の子2人のファミリーははじめてS教会の掲示板を訪ねた時から写真で知っていたが、その数ヶ月後に実際にお会いすることになるとはその時は予想もしていなかった。5年前に関東から佐世保へ赴任した時のカルチャーショックや子ども達が新しい環境や言葉に親達よりも早く馴染んでいった話など興味深く伺った。二人の女の子たちは見事にこの土地の子になりきっていて、その言葉のイントネーションがチャーミングだと思った。
しばらく海辺のビヤガーデンで過ごした後、Kの家へ行く。Kのファミリーは男の子が2人いる。夜に大人に伴って子ども達どうしが顔を合わせる時にはわくわくする気分があるものだ。子どもたちの華やいだ様子に遠い昔、親戚の家に泊まった時の従姉妹達との楽しい時間を思い出していた。我々がビヤガーデンにいた間にKがすばらしい二次会のテーブルを用意してくれており、掲示板ではおなじみのYおじさんもかけつけてくれていた。豪勢な海の幸、珍しい長崎の名物、楽しいおしゃべり、楽しい時間は流れていく。ひとしきり飲んだり食べたりした後、私たちはいくつかの讃美歌を合唱し、Kの弾くピアノに合わせて、サザンやビートルズも歌う。いつか日記にも書いた讃美歌444番はわたしが下手なギターで伴奏し、ゴスペルフォークをYさんとデュエットする。また約束通り、教会学校や英語学校の子ども達とやっているDRY BONESの歌とダンスを子ども達といっしょにやった。この歌のお陰で子ども達とも繋がれたような気がする。Aちゃん、Mちゃんの一生懸命な表情、T君の少し照れた表情。 オフ会の最後にKがショパンのプレリュードとベートーベンの月光をピアノで弾いてくれた。静かで情熱的な響きだと思った。Sも最近練習したというジョンレノンのLoveを弾いてくれた。
楽しい時間をお腹いっぱい過ごして、また不思議な暖かさに満たされて10時過ぎ、Sと共にホテルへ戻る。締めくくりはSとのおしゃべり。時間はいくらでも欲しいところだが、Sはこの日は5時前から起きているし、明日の予定もあるので、12時前には自分の部屋へ戻り、ゆっくりと部屋のお風呂に入る。お風呂には睡眠効果があるラベンダーのオイルを垂らしたものの、その日に起きた新しい出来事や出会いの余韻のためになかなか寝つかれなかった。
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