たりたの日記
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2003年07月11日(金) その美容院にはケルト音楽が流れていて

わたしはもともと待ち時間というのがそれほど苦ではない。その空間がここちよく、読みさしの本があれば何時間でも楽しく過ごせる。病院、歯医者、コーヒーショップ。しかし、美容院だけはどうも苦手だった。だいたい4時間くらいはそこで過ごすことになる。はじめのうちはファッション雑誌や女性週刊誌を物珍しくながめるのだがじき飽きてしまう。音楽も歯医者に流れているようなクラッシックやヒーリング系ならいいのだが4時間もヒップホップばかり聞いていると神経がくたびれる。美容院での会話が思いの他疲れるのはテレビも見なければ、世の中のことに疎い私は、どんな話をすればいいのかしらと変に気を回してしまうからだ。そんな風だから、いつも4ヶ月もたって、髪がもうどうにもひどい状態になってからようやく出かけるという始末。わたしは美容師さんにとってはなんともやる気をそがれる客だったに違いない。

ところが、去年の10月から行くようになった美容院では、待ち時間が少しも苦にならず、かなりリラックスしている。以前「アットホームな美容院」というタイトルで書いたと思うが、スタッフは私の担当のYさんと、先生であるお母さんに、店長のお兄さん、そして従兄のHくん。まさにお手本になるようなファミリービジネス。4人の関係がほんわかと家庭的なので、何か私まで親戚の仲間になったような気分になる。知らないお客どうしが気軽に話しに割り込み、みんなでひとつの話題で笑ったりするところを見ると、他のお客もそんな気分なのかもしれない。

美容師さんたちの人柄や、手入れの行き届いたふんだんな植物、また待ち時間にきれいなカップで出してくれるコーヒーや紅茶、その美容室を居心地よくしてくれる要因はいくつもあるが、もうひとつ、かかせないのがそこで流れる音楽。ここの音楽は有線ではなく、店長が好みのCDをかけているようだ。去年のクリスマスの頃に来た時、話が中世のイギリス音楽のことになって、私がたまたま持ち歩いていた「古いイギリスのキャロル」のCDをかけてくれ、また店長のコレクションの中から、本格的なアイリッシュフォークのボーカルのCDを聴かせてもらった。

今日その美容院でお茶をいただきながら文庫本を読んでいると「こういう音楽好きでしょう。リバーダンスというミュージカルのCDなんですよ。」と店長がCDの解説書を見せてくれた。伝統的なアイリッシュダンスの音楽に始まり、そこから派生した様々な土地でのアイリッシュ音楽がそれぞれ興味深い。ゲール語で歌われる美しいソプラノのケルト民謡風の歌や、タイタニックのテーマを彷彿させるウイリアンパイプやフィドルが奏でる哀愁をおびた旋律。音楽だけでも充分心惹かれるのに、これに舞台いっぱいに繰り広げられるアイリッシュダンスを伴うとすれば、それはすごいだろう。彼は数年前に見に行ったらしいが、「鳥肌が立った、今まで見たミュージカルの中では一番だ」と熱っぽく、ステージの様子を話してくれた。11月にまた東京公演があるのでHくんといっしょに行くのだそうだ。そういえば、アメリカに住んでいた頃は毎月のようにブロードウエイのミュージカルを見ていたというのに、ここ10年、本物のミュージカルを一度も見ていない。ひとまわりして終わったCDをもう一度かけてもらいながら、これは何としても行かなければと思っていた。





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