たりたの日記
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2003年03月08日(土) 彼は黄色のグラサンのいかついオニイチャンで現れた

明日つづきを書くなどと言っておいて昨日は更新しないままだった。さて、でももうあのぶっとび卒業式もはるか遠くのことのように思える。だいたい時というのは単に過ぎるだけでなく、何か、ひとつひとつ終わっていくような気がする。その時の感動や驚きも次にやってくる新たな驚きや状況の変化に押されてたちまち色褪せてしまうのだ。しかしその記憶がまるっきりフェイドアウトするわけではない。何かの拍子に生き生きとまたありありと思い浮かぶものである。

そういう意味でも、昨日の卒業式2部は一生忘れることのない映像として記憶に残ることになるのだろう。我が息子はかなり目立っていた。奇抜な格好の卒業生たちの中でもとりわけ。

何も青いクマの着ぐるみを着ていたのでも、真っ白いスーツに光ものを貼り付けたプレスリーの格好をしていたわけでもない。黄色いグラサンを鼻にひっかけたいかついちんぴらのいでたちでステージの上に登場した。で、暴れたり、怒鳴ったり、踊ったりとなんとも華々しいことであった。彼はなんと学校一人気の5人からなるコントグループの一員らしく、文化際や予餞会の度にオリジナルなコントで皆を沸かせていたらしい。話は多少聞いてはいたが、そのステージ(?)は初めてだった。「お母さん、見ると卒倒するかも」と聞いては見ないわけにはいかない。

この年齢の子たちってこの軽薄なちんぴらや、やくざがなぜか好きなのだろう。彼らがその格好でステージに現れるや異様な興奮のどよめきが起こる。イケメンのカッコイイ男の子たちへ向けられる賞賛とは趣を異にする、何か別の賞賛。その何かって言葉にはできないが分らなくもない。

さてお母様方の反応はいかにと気になるところであるが、さすがN高の親たち、いたって好意的に拍手喝采していた。
「かわいいわよね、あんな格好してても」
と、どこからかそんな声も聞こえていた。

さて、我が息子のコントのことばかり書いてしまったが、この2部の出しものは実に変化に富んでいて、他にバンドが数グループ、ジャズダンス、ストリートダンス、劇と、卒業生によるパフォーマンスが続いた。早々に大学が決まっている子もいれば、我が息子のように受験のさ中の子もいるし、また浪人覚悟の子もいるらしい。いずれにしろ、高校生活の最後の瞬間が受験一色に彩られていないのはなんと幸いなことだろう。この会の実行委員長は袴姿の女の子で、「みなさん、寒いところ、こんなに長いこと体育館に座らせてしまってごめんなさい」と泣きながら挨拶をしていた。思いがけないアクシデントがあり、時間が予定より2時間もオーバーしてしまったのだった。でもそれすらきっと忘れられない思い出として語り草になるのだろう。
ともかく、みんな、よくやったよ。卒業おめでとう!

コントのステージにどきどきしていた次男も私もすっかりそのことは頭からすっとんでいたが、この日はまた国立大学の合格発表の日でもあった。私はその後、父兄と先生方とのパーティーの席に出たので、私より一足先に家に帰った次男から携帯に連絡が入ることになっていた。不合格の場合はメール、合格だったら電話という申し合わせで。夕方6時すぎ、駅のコーヒーショップでコーヒーを飲んでいると携帯が鳴った。それは電話を知らせる着メロだった。
こっちもよくやった、おめでとう!





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