たりたの日記
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2003年02月21日(金) |
あなたがわたしにくれた場所 |
わたしが知らなかったHのことは知るまいと思っていた。しかし、日常は宙を浮いているようにふわふわと頼りなく、頭はHのことから離れない。Hのお連れ合いが残されたサイトへでかけた。
そこにはHが死ぬその日まで書き綴った日記があった。それは検査の結果の後、書き始めた遺書ともいえるものだった。検査の結果は白なんて言ってたのに、癌はどうにもならないほど進行していたのだ。知らなかった。そのことを誰にも告げずに、いつもの彼女を通していたなんて。他の人に余計な気遣いをさせたくないという彼女の優しさ。それにしても何と言う気丈さ。最後の日まで言葉を綴り続けたのは彼女らしい。
Hは捨て猫を家に入れ、大切にしていた。彼女が亡くなる前の日、その猫の一匹が死んでしまい、彼女は死んだ猫をタオルで巻いていっしょに寝たという。そして書いている。死ぬってこういうこと、固くなっていくことだと。翌日、眠るように天国へと住居を移したH。足元には眠るもう一匹の捨て猫がいて。お連れ合いの綴った文から浮かび上がってきたHの姿に胸がいっぱいになる。Hらしい死の形だと思った。
すべてのことに時があるという伝道の書の一節を思い浮かべる。それぞれにふさわしい時とその形が用意されているということ。わたしはどういう死を死ぬことができるのだろうか。そしてまたわたしは今日が最後の日かもしれないという生き方をしているだろうか。 メメント.モリ
(2月20日 深夜 )
あなたがわたしにくれた場所
風がウインドチャイムをしきりに鳴らしている 眠っているはずのわたしの耳はもうその音を聞いていて まどろんでいるはずのわたしの頭はすでにあなたのことを考えていた まだ早い朝、閉じたまぶたのむこうはまだ暗いというのに
幾夜も続いた眠れない夜 死を見据えて綴った日記 闘い続けたあなたの体 わたしが知らなかったあなたを少しづつ知っていく
そこだけであなたに会っていた あなたがわたしにくれた場所で あなたの伝えないことは知ろうとしなかった それでほんとによかったの?
あなたの優しさが次第に哀しく その場所の鍵を開けられないでいる (2月21日 未明)
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