たりたの日記
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2003年02月12日(水) |
愛のソネット3 < とらわれ > |
昨日、夫と渋谷の ル・シネマに「デュラス 愛の最終章」を見に行く。 原題は CET AMOUR-LA ( その愛)。晩年のマルグリット・デュラスと38歳年下の恋人との出会いから彼女の死までを描いたフランス映画だ。わたしは彼女の深い孤独とその愛の形をその言葉とともに愛してきたが、彼女の作品が彼女が生き抜いたその壮絶な愛から紡ぎ出されたことを改めて感じた。 愛はさまざまな形をしている。ソネット1ではスピリチャルな愛を、ソネット2ではアポロン的な秩序の中にある脅かされることのない愛を綴った。今日はそれと反対のところにあるもうひとつの愛を言葉にしてみた。危険や死さえ伴う愛が存在する。愛は人を解放する一方でまた人を縛り、また愛は与えるがその一方で限りなく奪うから。
愛のソネット3
とらわれ
愛はときおりデュオニソスを伴ってやってくる その香りは甘くあらがうことはできないゆえ 見えない力にただ引き込まれてゆく 足は地上を離れ心は果てもしらぬ空をうつろう他ない
愛は人を命からひきはがし洞窟の中に閉じ込める 歓びと苦痛はくりかえし訪れ 目は何も見ず、耳は何も聞かない そして死は喉元に鋭いナイフを突きつける
どうかここからわたしを出してください この死の淵から生還させてください この試みに会わねばならない理由は何ですか 人は思わず彼方へ向かって叫ぶ
彼方へ向かった声を聞くものがそこにいる 人はその叫びの故に死から命へとまた移される
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