たりたの日記
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2002年10月07日(月) |
背中に突き刺さるメス |
今日は例の粉瘤の手術の予約を取るために病院に行った。私がこの日はだめ、あの日もだめと手帳を見ながらごねごね言っていると、医者が 「では、これからやりましょう。」と言う。 そういうつもりではなかったから、掃除もせずに来たのだし、午後からはクラスが3つもある。今日は風呂もシャワーもだめというのならせめて朝シャワーを使うのだった。頭の中はいろいろとエキスキューズを探してみたが、どうせ切らなければならないのであれば、早く片がついた方が良いと医者の勧めに応じることにした。
診察用のベッドに腹ばいになり、麻酔の注射を受ける。 「麻酔の注射は痛いですからね」 と医者が心の準備を促す。 こういう時、私はわりかし肝が据わっている。実際注射の針が刺さるちりちりする痛みが不思議な安堵感に変るのを感じていた。この身体の痛みを心地よく思えるほど、心が疲労していたのだと思う。
麻酔が効いているので、メスが皮膚を切り裂く感触というものなどとても感じられない。せめて、今わたしの背中に突き刺さったメスの動きを、医者がその瘤を取り出す様子をこの目で見てみたい。その昔、私の父が十二指腸潰瘍の手術をした際、手術室に8ミリカメラを持ち込んで「切腹の記」の記録フィルムを撮ったということは以前、父の思い出の中で綴っているが、私はやはりあの人の娘だ。
40分ほどで縫合まで終わり、ホルマリン漬けの粉瘤とよばれるものを見せていただく。ピンポン玉ほどの肉塊に見えるがこれは中にどろどろの膿を閉じ込めた袋なのだそうだ。こういう塊が一ヶ月かそこらのうちにできるはずはない、何年かかけて大きくなったのですよと医者はいう。少しも気が付かないうちに身体にばい菌が侵入し、膿をこしらえ続けてきたのだ。身体も心も自分の持ち物でありながら把握しきれないものなのだなあと実感する。
しかし、痛い。しくしくと痛い。この痛みのせいなのか、それとも抉り出された瘤といっしょに私の内から抜け出したものがあったのか、心は妙に凪いでいる。
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