たりたの日記
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英語学校のすぐ前にあるパン屋さんでよくお昼のパンやおやつのケーキを買うので、そこのおばさんとはすっかり顔なじみになっているのだが、ひょんなことから家族のことを話すことになってしまった。 まず、彼女は私が独身者と信じて疑わなかったようで夫がいることが分るとひどく驚いた顔をして 「まあ、これからなんだろうと思ってたわ。」 と、おっしゃる。 いくらなんでも20代に見えるわけはないのだから、私を独身と見たその根拠はいったい何なのだろう。
「これからなんかじゃなくて、もう終わりなのよ。明日で息子が20歳になるんだもの。」
おばさんの 「ええーつ」という声にびっくりしたのはこっちである。 「あんたいくつなの」と真顔で聞いてきた。裏切られたような気分になっているようだった。 「人って分らないものだねえ」 というおばさんに、私は何と答えてよいのやら。 若く見えると単純に喜んだ訳ではない。私は見えていることと実態の間のギャップがどういう訳で生じるのだろうと複雑な思いでいた。
わたしにはそれほど夫や子どもの匂いが付いていないのだろうか。それなりに妻の役割も母の役割もやってきたつもりなのだが。そう見えないということはそこにあまり気持ちが入っていなかったということなんだろうか。生活感がないというのは褒められたことではない。
しかし、人がどう見ようとも、今日でHは二十歳になった。 この日を母親引退の日と決めたのだ。上の子にとっての母親という意味だけれど。
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