たりたの日記
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2002年03月16日(土) |
星川ひろ子さんの絵本 |
岡田なおこさんが企画したイベント「障害を知ろう・語ろう」の特別講演を聴きに目黒障害者支援センターへ行く。初めて行く場所だというのに下調べもしないで都立大学駅に着いてしまった。途中で買った東京ミニマップはさっぱり役に立たない。新しくできた施設らしく聞く人聞く人知らないという。交番に行って聞くと、「おそらくこの先を行ったところだと思うけど、もし違っていたらまた戻ってきて右に曲がって、、、、。」「あの、あと5分で講演が始まるので間違った道を行きたくないんです。確かにこちらですか。」と私はきちんと調べておかなかった自分のことは棚に上げて、ぎろっとおまわりさんを睨み付ける。早足にその道をまっすぐ行くとどーんとりっぱな建物が目の前に現れ、目的の場所だったことが分る。それにしてもこんなに大きな建物をなぜおまわりさんも知らないわけとまだ腹立たしい。走るようにして建物に入り、会場の部屋へたどり着く。入り口になおこさんがいて迎えてくれた。ああよかった間に合った。ハラハラドキドキの気分がさっと引いていった。なおこさんに会うのはこれで3度目だというのに、なつかしさでいっぱいになるのはどういうわけだろう。彼女の書いた児童書やエッセイやHPの日記などで彼女にたくさん出会ってきたからなのだろう。 写真家 星川ひろ子さんのことは聞いてはいたものの、お話を伺うのははじめてだった。「しょうがいってなあに」の5冊の写真絵本シリーズの作者としてしか知らなかったが子どもが小さい時5年間に渡って購読していた福音館の「かがくのとも」で星川さんの仕事にはすでに出会ってきていることが分った。重度の障害児の母親として生きてこられた氏の言葉は真実で重い。一言一言がびんびんと響いてきて私はおよそ泣くような場面ではないところでぐしゅぐしゅと泣けてきまりが悪かった。こういう時というのはたいていなぜ泣けるのかそのはっきりした理由が分らない。けれど何か人事ではない自分に直接かかわってくる何かがあることだけは分る。 休憩の時間に急いで写真絵本を4冊求める。講演会の後だと売リ切れてしまって買えないかもしれないとなおこさんにお願いして早めに確保させていただいた。障害を持つお兄ちゃんを弟の目から見た「ぼくのおにいちゃん」は2冊買った。今月末に訪ねる金沢の弟のところへ持っていこうと思う。上の子にとっては弟が、新しく生まれた子にとっては兄がこの絵本のおにいちゃんと同じ障害を持っている。彼らにとってこの本は特別な意味を持つことになるだろう。
講演の後、講師の星川さんやなおこさんをはじめ主催者の方々と食事をしながら話すことができた。また星川さんとは新宿までごいっしょすることができ、いろいろとお話を伺った。一冊の本を出すまでの大変さが伝わってくる。また星川さんの絵本はいわばドキュメンタリーであるが故に、そのモデルになる人の家族の方々の思いもあり、創作絵本にはないご苦労があることを知った。大変な作業なのですねと言うと星川さんは夕鶴が自分の羽を抜いてそれで布を織っている、そんな感じだとおっしゃった。書くということを始めた私にとってそれははっとする言葉だった。本を書くということ、作品を世に出すというのははそういうことなのだ。忘れられない言葉になるだろう。
帰りの電車の中で求めた絵本を広げた。「ぼくたちのコンニャク先生」「ぼくのおにいちゃん」「となりのしげちゃん」、その写真からすごい力で押し寄せてくるものがあって、後から後から涙だ出てきて止まらなかった。暖かい写真、美しい写真。だけどそれだけじゃない。いったいこれはなんなのだろう。なぜ泣いているのだろう。何か溶けていくものがあって、感謝の気持ちに満たされていた。
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