たりたの日記
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その坂道をのぼったところに わたしの生まれたところがある ある日おとなになってわたしは その坂道を上った
と、風景はいきなり光をまとい そこここから 声が聞こえた 道からも、そこにある石ころからも 山からも、そこにある木々からも
「オマエヲ シッテイルヨ ズット ムカシカラ」
時間と空間のフレームは いつはずれたのか わたしはひとり 不思議の中におかれていた
「オマエヲ シッテイルヨ キノウモ キョウモ」
見えている世界の扉をひと押しすると 向こうに別の世界のあることを あなたは覚えていますか わたしは忘れていました
子どものころ 扉を開けては 山や川や木々たちと 交信していたことを 紫色の稜線は教えてくれた
「オマエヲ シッテイルヨ タトエ オマエガココニイナクテモ」
なつかしさに泣きながら 回れ右をすると 背中の向こうで扉が閉まった 大人に戻ったわたしは その坂道を下りていった
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