たりたの日記
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2002年02月18日(月) |
映画「地獄の黙示録」 |
「地獄の黙示録」特別完全版を見た。4時間近く、それもかなり緊張を強いられる映画だった。 監督コッポラは戦争映画はそもそも反戦映画なのであって、この地獄の黙示録はまた「反”嘘”映画」だと語っている。彼はアメリカが経験した最も非現実的で、悪夢のような戦争の狂気や興奮、鋭敏な感覚とモラルのジレンマを見るものに訴えたかったと言うがしかし映画はまた、見る者の心の内に潜入し、どのようにも受け止められ、また作用するのだと思う。この地獄に魅入られた人がいてもおかしくはないし、戦闘のシーンに快感を覚える人だっていただろう。
私がまず感じたのは神との繋がりを失ってしまった人間の心に巣食う底なしの恐怖だった。カーツ大佐はその鋭敏な感覚の故に戦争の持つ残忍さや欺瞞の中で壊れていったのだと思う。写真家がいみじくも言ったように彼の心は狂ってはいないが魂が損なわれているのだった。そうして彼自身がそういう自分にまた自分が創り上げた世界に辟易し、終わりにすることを願っていた。
昨日の日記にイエスを誘惑しようとした悪魔をいささかコミカルに書きすぎたと少し反省しているが、そういう意味ではこの映画にはシリアスすぎる形で悪魔の巧妙な手口が描かれているような気がする。人間を何の痛みも覚えることなく殺戮することのできるマシーンへと作り換える悪魔。そしてまた鋭い感受性や倫理観を破戒し、狂気へと向かわせる悪魔。ベトナム戦争は今過去のこととしては語れない。何の反省もないままに「新しい戦争」は起こってしまったから。そしてそれ以来、不気味な空気がそこここにたちこめている。
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