たりたの日記
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2001年12月31日(月) 大晦日の台所

大晦日は一年に一度朝から夕方まで台所に立ちっぱなしで過ごす日だ。
めんどうだなあ、デパートから豪華版のおせちを買ったり、暮れからお正月にかけてどこかに泊って上げ膳下げ膳のお正月をしてみたいなあと思う。私さえその気になれば、家族のものは誰も文句を言わないだろうし、むしろ「そうそう、それがいい。」と喜ぶくらいのものだ。そう思いながらこうやって1日がかりでおせちを作るのはやはりそれが好きなんだろう。昆布やかつお節の煮立つ時の匂いや紅白なますの美しい色、ぱあっと広がるゆずの香り、そういった食材との関わり合いが好きなんだと自覚する。これまではそういうことに気が付かないでいたような気がする。楽しむ心のゆとりがなかったのだろう。

一番大変な野菜の下準備は家族の助けを頼む。夫と次男が野菜を洗い、皮を剥く。私は煮物用、なます用、飾り用と野菜を切り分ける。野菜の下準備が終わったところで大きな鍋にたっぷりと水をはり、昆布とかつお節でだしを作る。このだしは煮物、なます、年越しそば、お雑煮と大活躍するのである。ちなみに私は日常的には味噌汁も煮物も粉末だしのお世話になっている。味は歴然と違うものの、家族のメンバーの味覚はあまり敏感ではなく、何でもおいしいといってくれるからどうせ分からないのならと簡単な粉末だしを使うことになってしまう。

まずはなます。細く切った大根とにんじんを3パーセントの塩水にだし昆布を入れたものにしばらく漬け込み、一時間ほど置いたところで軽く絞って、酢と砂糖と出汁を加えきざんだゆずを混ぜ込む。今年は体に良いといわれる黒酢を使ってみた。砂糖も三温糖。料理の本によれば2日目から食べると書いてある。そういえば、なますと黒豆は30日に作っていたのに今年はうっかりしていた。

次は豚の角煮。圧力鍋があるのでやわらかな角煮が簡単にできる。ねぎとしょうがをいれた水に三枚肉の固まりを1キロ分入れて圧力鍋にかける。おもりが回りはじめて30分煮ると脂肪がすっかり煮解けて、肉はくずれるほど柔らかくなる。再度圧力鍋に戻し、醤油、みりん、酒、煮汁を加え、10分煮る。その後蓋を空け煮汁がとんでとろっとした煮汁が肉にかからまるようになったところで火を止める。
煮汁は冷めると脂肪が白く固まるのでそれを除くとよいスープになる。いつも使いそびれてしまうので今年はさっさと冷凍してしまった。

おせちの定番の煮物、我が家は筑前煮だ。私の両親の出身地の佐賀の郷土料理筑前煮だが、母は作ったことはなかった。母の煮物は祖母がやっていた通りにまず鯛を煮て鯛を引き上げた後、えび、しいたけ、大根、ごぼう、れんこん、里芋、人参、たけのこ、こんにゃくなどを調味料を足しながら一種類づつ順番に煮ていくというもの。紅白歌合戦が始まっても煮物は延々と続いていた。はじめのうちはこのやり方で一品づつ煮ていたけれど、これは果てしなく時間がかかり、疲れてしまう。その割に子どもも夫もそんなに食べてはくれない。いつのまにか母の煮物のやり方をやめて本に載っていた筑前煮を作るようになった。鶏肉、干ししいたけ、たけのこ、人参、ごぼう、れんこん、こんにゃくを大きな無水鍋で炒り煮にし甘辛いたれで煮からめる。油を使うのでこってりとした味で子ども達も比較的良く食べる。それにしても4人家族だというのに大きな鍋いっぱいに作るのでいつも最後まで食べ切れなくて残ってしまう。今年はおせちに飽きた頃、カレーを作ってその中に残った筑前煮を入れて正月カレーという新メニューにしようと密かにたくらんでいる。
カレーの中に家族が食べなくて残って困るものを入れるのだがそれが思いがけなくヒットすることがある。たとえば熟して柔らかくなりすぎた柿。わざわざそのために買ってきたいほど柿入りのカレーはおいしかった。使いみちに困った大根葉を小さく刻んでキマカレーに混ぜこんで煮たものもおいしく、体にいいという感じがした。

昨日のうちに黒豆とかずのこは作っていたので松前漬を漬け込むと今日計画していた調理は早々と終わってしまった。まだ時間がある。予定してはいなかったが暮れに鹿児島に住む叔父が送ってくれていたさつま芋と紫芋できんとんを作ろうと思い立った。みりんで甘く練り上げたものより、砂糖を控えた茶巾絞りの方が良いだろう。芋を別々に茹でて砂糖と塩を加えハンドミキサーでクリーム状にする。紫芋は一本しかないがかなり濃い紫色なのでふつうのさつまいも2本分と混ぜ合わせるときれいな薄紫色になり量も増えた。黄色のきんとんと紫色のきんとんを半分づつ合わせ茶巾代わりのサランラップで絞ると模様入りの茶巾絞りがたくさんできた。さて誰が食べるかが問題ではあるが正月らしい楽しい一品ではある。

一年の最後の日記が食べ物のことで終始してしまったがこれで今年の日記をお終いにしよう。


たりたくみ |MAILHomePage

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