たりたの日記
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2001年09月09日(日) |
スタッフミーティング |
何の変哲もないような景色が家の中から窓枠というフレームの中に入る時、そこに全く別の世界が現れることがある。 今日は礼拝の後で英語学校のスタッフミーティングを、川越のびん沼のほとりにある、「と美多」というギャラリーと喫茶を兼ねたお店で持った。オーナー−は古くから、我々の英語学校の生徒さんだ。 ちょうどフラワーアレンジメントの作品が展示してあり、季節の野菜をアレンジしたものや、山のつるや実をアレンジしたものなど、自然のエネルギーに満ちていた。和室は一方はびん沼に面しており、そこから見える沼のたたずまいが何とも風情がある。自然のままの沼には白鷺が舞い降りていた。水の面は静かで沼を取り囲む植物は別の世界に生きているようにしんとしている。オーナーのTさんはこのびん沼の景色に見せられてここに店を構えたという。
さて、しかし、私たちの今日の目的は10月の末に予定している、ハロウイーンパーティーの計画だ。その時に私たちが見せる" Little Red Riding Hood"(赤頭巾ちゃん)の練習もある 。これはジャズチャンツで(ラップのようなもの)構成されている英語劇で、ラップしたり、叫んだり(?)と他のお客さんの御迷惑になる。お店の離れにはお誂え向きのログハウスもあり、そこでおいしい昼食やデザートをいただきながらミーティングや練習をした。
劇は初めての読み合わせだったが、ジャズのリズムに乗って楽しくやれそうだ。ネイティブ2人と、アメリカの演劇の勉強をし、今も、英語演劇の舞台に立っているMさんと、強力なメンバーが揃っている。主役の赤頭巾は近頃アメリカから戻ってきて、帰国子女のクラスに来るようになった小学校2年生のAちゃん、そしてお兄ちゃんのYくんがハンターの役。始めはスタッフだけで配役を決めていたのだが、クラスの時に彼らにやらせてみたところ、まるでテープの録音と変わらないほどにうまいのである。彼らがせっかく身に付けた言葉をみんなの前で発表する場にもなり、それを見る英語学校の生徒たちにとっても良い刺激になるに違いないと彼らを劇に取り込むことにした。
帰国子女たちは、日本の社会の中で、彼らが外国で苦労しながら学んできたことが何の評価もされない。まるで無かったかのように、彼らの成してきたことや見につけたことが0にされてしまう。それでなくても、日本から外国で生活するようになって、一度は0にされているのに。彼らは赤ちゃんの時からその国で過ごしてきた級友に交じって、新しい自分の言葉とアイデンティティーを1から獲得しなければならなかったのだ。しかし、また自分の国に戻ってみれば、身につけた言葉や習慣はあまりにも違いすぎ、またなかなか表面に出せるようなものでもなく、そのうちに、帰国子女の子たちは日本の普通の子になるために、自分たちが身に付けたことをどこかで否定すらするようになる。社会に順応していくためにはそれも仕方のないことかも知れないが、それはあまりに悲しい。他国で身につけた言葉も、またアイデンティティーも彼ら自身の持ち物には違いないのだから。彼らの日本人ではない、もうひとつのものも出していける場を何とか確保していきたいと思う。
さて、赤頭巾。私は狼にひと飲みにされるおばあさんの役だ。他のメンバーより15も歳が多いのだから、どう考えてもおばあさん役はまぬがれようがない。
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